ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 『神旅。』5話UP ( No.13 )
- 日時: 2010/12/27 18:31
- 名前: 空駆ける天馬 (ID: U3CBWc3a)
- 参照: http://うーん…用語が多くなってきた
【第5話 諒陣高校】
あれから、十郎とコヨルは自宅に無事着いた。だが、家の中では何も喋らず、終始無言状態だった。
そして朝を迎え、十郎は学校へ行く用意をする。玄関へ着き、まだ家の中にいる真奈とコヨルに叫んだ。
「じゃあ、行ってきます。」
「行ってらっしゃ〜い!!私、今日帰り遅いから!!」
真奈の言葉に十郎は返事をすると、少しその場に立ち尽くしていた。いつもコヨルも学校に付いてくる。
だが、玄関にさえコヨルは来なかった。
「……行ってきます、コヨル。」
十郎は呟くと、自宅を出たのだった。
*******
十郎の通う諒陣高校は、自宅から目と鼻の先にある。大通りを渡れば、あっという間に着く距離にある。
学校は「口」型の建物で、エレベーターが設置されてある豪華な学校だ。中央には噴水広場もある。
グラウンドは芝生、廊下には対不審者用のシャッターが幾つも設置されてある。
「お〜す、十郎!!」
「十郎ちん、おっはよう♪」
十郎が歩いていると、幼馴染の黒凪洋太、クラスメートでムードメーカーの渡会朱里が声をかけてきた。
「久しぶり。」
十郎を挟むように2人は並んで歩くと、冬休みどう過ごしたか、何したか、なんて話題で盛り上がっていた。
門を抜けて下駄箱で靴を履き替えると、最上階の5階までエレベーターで向かう。
ちなみに、1年生は5階、4階。2年生は3階。3年生は2階、1階と決まっている。
「久しぶり〜ぃ!!!!」
朱里が先頭に元気よく教室に飛び込んだ。
その瞬間、教室にドッと笑いが溢れ、洋太と十郎も笑いながら教室に入る。
十郎は笑っていたが、内心コヨルのことが心配でたまらなかった。
16年間共にしてきて、初めて泣いた姿を見たからである。コヨルは神だが、十郎の大切な家族だ。
「どうした?元気ないな。」
十郎は自分の席をついてため息をつくと、横の席である洋太が心配そうに話しかけてきた。
「大丈夫。ちょっと、色々あってさ。」
「……十郎。何かあったら、相談しろよ。」
「あぁ……」
十郎は洋太の優しい言葉に微笑む。洋太も爽やかな笑顔を見せる。
「何何!?2人とも何しんみりしてんの!?」
感動できる場面を、朱里が横からハイテンションで現れ崩壊した。洋太と十郎は、思わず顔を合わせて笑う。
この時、十郎は考えもしなかった。
この平和な学校生活が______
一瞬で消えるなんて______
*******
『わしじゃ。出てこい。』
一方、同時刻にコヨルはどこかの廃ビルの中にいた。
床や壁は煤で黒くなり、焦げた机や椅子がそのまま放置されてある。ガラスも割れ、床に破片が散乱していた。
『…あんた、私より階級下なんだから敬語使いなさいよ。』
コヨルの後ろから、美しい容姿の高校生ぐらいの女性が現れた。白い肌に透き通った蒼色の瞳をしている。
『すまんな……ちょっと厄介事になってしもうて…』
『そんなの前からでしょ。で、何かあったの?』
謎の女性は白いワンピースを靡かせながらコヨルの前に来た。腰まである黒髪は大人の雰囲気を漂わせている。
『わしは結構やばいかもしれん。このままじゃと、恐らく十郎にまで危険な目が及ぶ。』
『……十郎?あぁ、あんたの適合者ね。で、私にどうしろと?』
『……して、……してくれんか?』
『はぁ!?』
コヨルの頼みに、女性は驚くと苦笑いを浮かべる。
『マジで?』
『マジじゃ。』
『うそでしょ。』
『本気じゃ。』
『……同罪になりたくないけど、あんたには借りがあるからね。』
女性は頷くと、コヨルの肩に手を置いた。コヨルの目を見てニッコリと笑う。
『いいわよ。』
『……ありがとう、テミス。』
コヨルは掟の神テミスにお礼を言うと、テミスと握手を交わした。