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Re: 『神旅。』 7話UP ( No.27 )
日時: 2010/12/30 13:27
名前: 空駆ける天馬 (ID: U3CBWc3a)

【第8話 参上……?】


急降下していくジャスパーを、大慌てでコヨルは追いかけていた。しかし、相手は羽を使い加速していく。
『ぐっ!追い付かん……』
コヨルはジャスパーを睨みながら急降下していくが、スピードは一定のまま。ジャスパーとの距離は広がる。
そして、諒陣高校のグラウンドが見えた。
グラウンドには、大勢の生徒が帰宅するために門へと向かっている。
ジャスパーは生徒たちを見ると舌打ちをし、そのまま方向を変えて体育館の屋根へと向かう。
コヨルも方向転換すると、体育館の屋根へと向かう。

『ジャスパー!!捕まえたよ!!』

体育館の屋根には、アニーと法堂、2人にやられたテミスが血まみれになって倒れていた。
『テミス!!』
コヨルは屋根に着地すると、アニーと法堂めがけて走り始めた。が、その前にジャスパーが立ちはだかる。
コヨルは後ろに下がると戦闘態勢に入った。と同時に、法堂が蛇の尻尾でテミスの首を締め始める。
『よ、よすんじゃ!!!』


『こいつを助けたければ、我々と共に“ゼロ”に戻れ。そうすれば、こいつの同罪は見逃してやる。』


ジャスパーは不敵な笑みを浮かべながら言うと、法堂にアイコンタクトを取った。
法堂は尻尾でテミスの首を絞めたまま持ち上げ、隣にいたアニーが剥き出しの鋭い歯をテミスの動脈に合わせる。
『今の状況、お前に選択権はないぞ?』
『テミス………………くそっ……………』
コヨルは地面に膝をつくと、絶望の表情で地面を見つめた。ジャスパー達はコヨルの姿を見て鼻で笑う。
『素直で何よりだ。では、貴様を拘束する。』
ジャスパーの言葉で、アニーと法堂はテミスを離して、コヨルに近づこうとした。その時だった。



ゴォォォォォォォォ



何の前触れもなく突風が吹いたと思うと、ジャスパーとコヨルの間に制服を着た女子生徒が現れた。
ジャスパーは一瞬呆然として女の子を見ていると、女の子は顔をあげてジャスパーに言った。
「シィ、ユファ!!お願い!!!」
女の子が叫んだ瞬間、アニーと法堂は突然後ろに吹き飛ばされた。

『きゃっ!!』

『うわっ!!!』

しかし、飛ばされながらも体勢を戻して着地する。2人が前を見ると、そこには2人組の男女が立っている。


『ユファ!!私はあの男を倒す!!』


『シィ……もうちょっと考えて行動しないと……』


瓜二つの姿に淡い茶髪に淡黄、片方の目が橙の目の風の神シィファンとユファンは背中を合わせて戦闘ポーズ。
右目が橙色のシィは走りだし、回転蹴りで法堂を攻撃。
ため息をつきながら走りだした左目が橙色のユファは、軽快な身のこなしでアニーの後ろに回る。
そして、マントを軽々と引きちぎった。

『貴様………誰だ?』

アニー達と戦うシィとユファを見ながら、ジャスパーは女子生徒に尋ねた。
長くまっすぐな黒髪にすみれ色の目、スラっとして背が高い逆月柚羽は、笑いながら言った。


「諒陣高校第44期生徒会会長、逆月柚羽。参上♪」


柚羽は微笑み、そのままジャスパーの目の前で指パッチンをした。その瞬間、小さな竜巻が起こる。
『ぬおっ!?』
ジャスパーは小竜巻に足を取られ派手に転倒。柚羽はその隙にテミスの元へ駆け寄り、生死を確認する。
コヨルはその間、呆然とこの光景を見ていた。

「逃げるのよ!!来て!!」

柚羽はテミスを抱えながらコヨルに言う。コヨルはとりあえず頷き、柚羽と共に屋根から飛び降りた。