ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: android heroes!! ( No.1 )
- 日時: 2010/12/24 01:44
- 名前: なる ◆7lihNriEqk (ID: nxPXMTJg)
有機アンドロイドとは、小型PCに電子回路を接続し、読み込んだディスクにインプットされているデータに沿って行動する機械である。
人間を模した外見から、複雑に変化する表情、感情に至るまで人間性に特化した機体を持ち、使い手に絶対の忠誠を誓う。
月に一度のメンテナンスを怠ると、バグが起こったり機体に不具合が起きたりする。
バグは使い手たちが最も恐れる状態異常の一つで、機体に積み込まれたデータが改ざんされたりデータそのものが飛ぶ事もある。
未解析のバグに侵されたアンドロイドは、ASK(アスク)と呼ばれるアンドロイド総合研究機関に引き取られ、ウイルス検査などが行われた後にスクラップとなる。
有機アンドロイドは現在、初期型と次期型、最新型の3種類の機体が販売されている。
いずれも軍事用だったものが家庭用に改良された機体で、その使い勝手の良さや可愛いらしい外見から愛玩としてコレクションする者もいる。
データディスクは容量一杯まで搭載することが可能だが、搭載し過ぎると故障に繋がる危険性があるため、殆どの使い手は容量に余裕を持たせた機体に仕上げている。
アンインストールはアンドロイドにとって「死」を意味し、また無差別にアンドロイドをアンインストールした場合は犯罪として扱われる。
このように有機アンドロイドは我々の生活に深く関与し、世を支えているのである。
長く面白味のない解説を読み終えた俺は、分厚い書物を閉じて、いそいそとキッチンに立つ2体のアンドロイドに向かって声を掛けた。
「アルト、メルト。明日はメンテナンスの日だからな、分かってると思うが…」
すると片方の青頭がこちらを振り返り、にっこり微笑むと「分かってますよ。」と続けた。
我が家のアンドロイドは実に忠誠的で、実に中性的である。
俺の言う事は絶対だし、制作側の陰謀か何かは知らないが、かなりのイケメンだ。
双子という設定も気に入った。青い頭のアルトと、水色の頭のメルト。
性格はてんで似ていない上に、弟のメルトの方は使い手(主人)である俺にさえ反抗的な態度を示している。
世界中に量産されたアンドロイドの内、「主人に反抗的な態度をとる」機体は恐らくこいつしか居ないだろう。
特別なディスクを読み取らせた訳ではないのに、不可解な話だ。
そんな事をぼんやりと考えながら、せわしなく動き回る青頭の後ろ姿を眺めていると、突然玄関のチャイムが鳴った。
数日前に宅配を依頼した商品が届いたのだと思った俺は、忙しそうなアルトを傍で見ているだけのメルトに出てくれるよう頼んだ。
嫌々ながらも玄関へ向かうメルト。
ソファに寝転がって、こういう時アンドロイドって便利だよな、などとメルトに聞かれたら間違いなく抹殺されそうなセリフを吐いていると、慌てた奴の声が耳をかすめた。
「やっ……何だよお前っ…離せってば!」
ただ事では無いと察知した俺は、ソファを飛び降りて玄関へ猛ダッシュした。
多分、自己最高記録をマークしていたと思う。
「メル……」
格好良く登場する筈が、つるつるに磨き上げられた廊下で勢い良く滑り、顔面から不時着というあられもない姿を晒してしまった。
突き刺さるような視線が何より痛かったのは言うまでもないが。