ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: android heroes!!  ( No.5 )
日時: 2010/12/26 00:21
名前: なる ◆7lihNriEqk (ID: nxPXMTJg)

とりあえず紅葉さんを客室兼リビングに招き入れ、洗い物が終わり暇そうにしているアルトにお茶を出すよう指示した俺は、黒皮のソファにゆっくり腰をおろした。
図々しくも先にソファを占領していた紅葉さんに向き合う形で座る。
紅葉さんは今日も今日とて綺麗だ。
真っ赤な着物には金色や銀色の派手な柄がデザインされているにも関わらず、紅葉さんが着ても全く違和感がない。
かんざしは季節からとってきたのか名前からあやかってきたのかは不明だが、これまた赤色の紅葉形をしている。
緩く巻いた髪は、手入れが行き届いているという証拠を見せつけるかのように艶やかだ。
俺みたいな薄汚い技師と絶世の美人が何故このように親しくなっているのか……
それは、まぁ単純に紅葉さんが操るアンドロイドの修理を俺が担当したことに由来するのだが、いきさつなど語っても大して面白くもないので割愛させてもらう。
「お茶、どうぞ。」
そうこうしている内に、働き者で主人(俺)に従順なアルトが、円い盆を手にとたとたとやって来た。
俺の前には挽きたての珈琲が、紅葉さんの前には極力まで濃く煎じた緑茶が、俺の隣でソファに体育座りしているメルトの前にはオレンジジュースがそれぞれ置かれた。
アルト自身は、最後まで盆の上に残ったサイダーを机に置くと、盆を片付けに再びキッチンへ戻っていってしまった。
紅葉さんは苦そうな色をした緑茶を一口啜ると、「ところで」といきなり本題に移るような素振りを見せた。
料金の延滞ならお断りしますよ、と喉まで
出かかった言葉を飲み込む。
「夕炉の事なんだけれど……」
一応説明しておくが、夕炉ゆうろというのは紅葉さんが操る有機アンドロイドの名前だ。
俺が操るアルト&メルトは所謂初期型で、紅葉さんの夕炉は次期型。
アルト&メルトより後に生産された機体ということだ。
夕炉は戦闘に優れた機体で、予め戦闘ディスクが付属している。
俺のメルトも戦闘ディスクをインストールしてあるが、もともと付属していた訳ではなく大枚を叩いて購入したディスクなので、夕炉ほどお得ではない。
むしろ損。
今日は一緒に来ていないみたいだが、いつもは紅葉さんにべったりで人工ポニーテールを揺らしながらはしゃいでいるあの夕炉が、錯乱したアンドロイド相手に奮闘するなんて考えただけでも鳥肌が立つ。
言い忘れていたが、夕炉は女の子だ。
「夕炉がねぇ、ウイルスにやられちゃったみたいなのよ。」
「ウイルス?メンテナンスは受けてるんですよね。」
「当たり前じゃない。夕炉はあたしの友達であり妹であり大切な娘なのよ。メンテナンスを怠ってウイルスに侵入されるなんて有り得ないわ。」
いきりたって緑茶をこぼしそうになる紅葉さんにビクつくアルト。
いつの間にかサイダーを置いた場所に戻ってきていた。
「じゃ、じゃあ原因は一体…」
「えぇ、それなのよね……まぁ恐らく…」
分かり切ったような表情で紅葉さんは言った。
「外部からの侵入による感染……なのでしょうけど。」