ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Walking -第0章- ( No.1 )
日時: 2010/12/27 11:24
名前: 深山羊 (ID: TNiD2WXY)


第0章

 待ち合わせ場所のカフェ。指定の場所には背格好から見てやせ細っている男が座っている。店内に入るとマスターが自慢の髭を持ちあげていつもの珈琲を用意してくれる。その間に男に声を掛ける。
「依頼ですか?」
 そう聞くと痩せほそった青年はゆっくりと頷いた。それと同時に椅子を引いて席に座る。
「実は先日、僕の彼女が……」
 言葉が詰まる、大体想像は付くが向こうが言い切るのを待つ。
「……殺されたんです」
 予想通りの回答に少し頬が緩みかけたがキュッと引き締める。
「どういった状況で?」
 青年は俯くとつらそうな表情を浮かべ今にも泣きだしそうだ。それでも何とか持ち直して口を開く。
「首が……肩の位置に切りそろえられて……無くなってました」
 要するに鎖骨から上が無くなって綺麗に肩と肩が一直線につながっていたということか。
「無くなっていたというと首なし死体ということですか」
「はい」
 ふむ、そうか。助手になって初めての仕事が首なし死体か、中々面白いことになりそうだ。
「で、依頼なんですがどういった内容で?」
 さっきまでとは打って変わった表情で
「犯人を探してください」
 声には怒りやら憎しみやらが表情には憎悪が感じ取れる。
「見つけるだけでいいんですか?」
「はい、後始末は僕が自分でします」
 遠まわしに自分で殺すと宣言している様なものだ。
「ところで」
 また少し声色が変わった。
「貴方はMr.ウォーキングに何故従っているんですか?」
 全くストレートに聞きづらいこと聞いてくる奴だな。けどまぁ、いいか。
「少し長いけど聞くかい?」
「ええ、是非」
 好奇心は猫をも殺すってことを知らないのか?だが
「問題ない、関係ない俺には」
「えっ?」
 不思議そうな顔を浮かべる青年、そのタイミングでマスターが直々に珈琲を運んで来てくれる。いつも通り気がきく。
「いやいや、こっちの話ですよ。 じゃあ少しお話しましょうかね」