ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Walking-第二章- ( No.14 )
日時: 2011/01/16 14:45
名前: 深山羊 (ID: /w7jENjD)

 第二章
  -首なし死体と黄泉帰り-


「一色、今日は萌子ちゃんも一緒か」
 声を掛けてきたのは金髪のおっちゃん、顔は渋いが金髪がそれに似合わない。
「はい、萌子にも働いてもらわないといけないことがありましてね」
 俺の左側で腕を掴んでおとなしくしているこいつは【ウォーキング】。服装はゴシックロリータ、何を考えているのだか。普段はすぐにでも脱ぎたがる癖に出かけるときは常に重装備だ(ウォーキングの時はスーツだが)。
 薄い青色をした長い髪に不釣り合いな金色の瞳。肌は病的なまでに白く、その笑顔は一級品だ。しかし、その本性は露出癖のある超高濃度の圧縮を掛けられた変態でこちらの世界でかの有名な【ウォーキング】なのだから。
「あんまりその子に無茶させるなよ。こっちの世界じゃ目を付けられたらやばいんだからよ」
 真面目に心配してくれるがその必要はなさすぎる。まさに心配ご無用ってやつ。
「そのつもりなんですけどね。今日は急ぐんで、また来ますよ」
 軽く愛想笑いをしながらその場を立ち去る。隣の怪物が脱ぎ始める、否。おとなしくしている間に事を済ませたい。
「まってるぜー」と笑い声を交えながら手を振るおっちゃんを見てると何故だか無性に申し訳ない気になるのは気のせいか。
 じーっと隣の怪物を見ていると
「どうした?私の裸が気になるのか?」
「どうしてそんな下品発想しか出てこないんだ」
 年がら年中発情してる猫かなんかなのか
「思春期だから?」
「そういや年齢聞いてないからその線も正しいかもしれないけど、思春期に露出が好きになるなんて初めて知ったよ」
 俺にも思春期というやつはあったがそんな記憶は欠片もない。
「勉強不足だぞ、比呂君」
「素で本名言うのやめてください」
 というか本名ばれてんのかよ、最悪の場合に逃げるに逃げられないじゃないかよ。
「一色ってなんかダサくない?」
 oh...
「今わかった。やっぱり喧嘩売ってますよね?」
「その気はないんだけどついつい本音、もとい心の声がだね」
 やっぱり喧嘩売ってるよねぇー。
「悪気百%じゃないかよ」
「そうとも言う」
「いや、そうは言わないけどさ。なんというか本気でなんで俺とこんな茶番してんの?」
 実際喧嘩を売られていようがなんだろうが実力行使されたら俺なんて一秒も要せずに殺されるだろう。
「茶番なのかい?」
 心なしか口調が少し違った。
「あんたからしてみればそうだろ」
 出来るだけ気付いたことを悟られないようにさっきと変わらぬ口調で答える。
「茶番ねぇ……。しいて言うなら君が気に入っているってのと」
 気に入っているか……。嬉しいが吉かと言われればどうかな、としか言えない。
「と?」
「【ウォーキング】をやってるのに飽きたってとこかな」
「飽きる?」
 その名前に飽きたからと言って捨てられるほどこの世界は甘いものでもない。過去には付けられた名前が大きくなりすぎて無残な死を遂げた例は少なくもない。
「そうそう。実際つまんないよ。長いことそうやって恐れられて来たけど。本当につまらない。喧嘩だってまともにできない。もちろん口喧嘩も」
 しかし、この人にしてみればなんて名乗ろうが何時捨てようが関係ないのだろう。それくらいに強いのだから。
「どうして?」
「反抗しようって輩がいなかったってところ。それに反抗してきても大体力技だから逆に潰しちゃうから」
 そういうことか。なら色々と合点がいく。
「こっちの世界にビッグネームに喧嘩売ろうってなるような馬鹿は居ないからな」
「そういうこと。だから試しに【ウォーキング】の活動を停止している訳。隠れ蓑という訳じゃないけどこうやって君と探偵のまねごとしてる訳」
 まねごと、ね。俺からしてみればいい給料がもらえるだから長くそのまねごとを続けてもらいたいところではある。
「なるほどね」
「わかった?」
 口調が俺をからかう時のに戻る。思いのほか考えた行動だったと言ってもいいだろう。
「大体」
 視界に珈琲工房が入る。後でここに頼まれごとの用事を済ませに来なければならないことを忘れないように。
 二人とも黙ったまま少し歩くと青をバックに白木屋と書かれた看板が目に入った。どうやらここらしい。入口は階段が下がっていて地下に降りる様になっているところの奥に見える。地下に居るのにさらに地下に行くとはこれいかに。
「そら、行くよ」
 さっきまでおとなしくついてきただけのウルカだが、意気揚々と階段を下りていく。
「やれやれだぜ」

Walking-第2章- ( No.15 )
日時: 2011/01/22 21:17
名前: 深山羊 (ID: /w7jENjD)


   ◆


 中に入ると少し薄暗く異様な空気を醸し出していた。すると奥から声が聞こえた。
「いらっしゃい」
 声に続き奥から痩せぼったい男が具合の悪そうな顔色ででてきた。
「死体を見せていただきたいのですが」
 そういうと男は手でついてこいと表し背を向ける
「どんなのが欲しいんだい?」
 歩きながらそう問われる。ウルカは何故か借りてきた猫のようにおとなしい。
「いえ、とある人の依頼でして、首のない遺体を拝見したいのですが」
 男はクルリとこちらを向いて確認をとる。
「もしかしてあの男から依頼を受けたのかい?」
 何か含みのある言い方だが気にしないでおこう。
「多分その方だと思います、電話番号を控えてあるのでそちらと合わせていただけると」
 そう言って依頼人の携帯番号を見せる。それに目を通した男は小さく頷き、ついてこいと催促した。その背中を追う。
 数十秒ほど歩いて男が立ち止り右側に指を差す。
「これだ」
 右を向くと長く横は肩幅程度の扉、簡単にいえば更衣室にあるようなロッカーがあった。そのロッカーのネームプレートには依頼人の名前が書かれてあった。
 男は腰にぶら下げた鍵の中から一つを取りだし取っ手の下部にある鍵穴にそれを差しこみ右側にまわす。カチンとなると取っ手を下げて引く。
「これは中々猟奇的だな……」
 中には素っ裸の死体が両脇の下の棒に支えられて立っていた。特にこれと言って腐っている様子はない。当たり前だが。
 一つ普通の死体と呼ぶには奇怪すぎる。やはり首が無かった。それもものの見事に。
「首は切られたにしては綺麗な切り傷だな」
 まるでギロチンで首を切り落としたように綺麗な切り口、普通のナイフなどでは無理。チェーンソーの様な物では到底無理だ。
 確かに分かりやすい恐怖ではあるが実際には使いづらいだろう、皮膚や髪を刃が噛んだら即ストップの使いづらい道具だ。
 この切り口なら日本刀くらいしか思い浮かばない。こう言う分かりやすい武器ならどうとでもなる。そう思うと楽な相手だろう。
 死体から離れ、ありがとうございましたと礼をすると
「もういいのかい?」
 と聞かれた。確かに切り口を見る程度で終わったのだから確認もとりたくなるものだ。
「ええ、欲しい情報は手に入れましたから」
 俺じゃなくてウルカにとってだが。
「そうかい」
 戸をしてめ鍵を掛けた。正直もう見るのは勘弁してもらいたいものだ、他の男の女の裸なんて誰がうれしいんだか。
「代金はその死体の持ち主から戴いてください」
「わかった」
 踵を返してとっととこの場所から出て行きたかった。
 

 外に出て、一番に珈琲工房に顔を出す。
「いらっしゃい、一色。お遣いか?」
 気前のよさそうな顔をしたダンディーなおじさまが珈琲カップを洗っていた。
「ああ、頼まれ物の品、代金はマスターから貰ってんだろ?」
「こいつだよ、持ってきな」
 雑に扱われ投げられたのは20cm程のビンだった。中には珈琲豆がぎっしり入ってある。
「これ一つ?」
 仕入れには量が少ない気がするが
「そうだよ、元々生産量が少ないやつなんだ。そんなけでも手に入ったのが驚きな位さ」
 ふーん。これくらいの量でねぇ……
「まあ、とりあえず確かに受け取ったよ」
「あいよ」
 滞在時間は物の数分。珈琲の匂いがきつくてまともに立ってるのも嫌になる位の場所に良くいられるものだ。
 こちらもさっさと出てウルカのところへむかう。

Walking -第2章- ( No.16 )
日時: 2011/01/26 00:21
名前: 深山羊 (ID: /w7jENjD)

「おや、早いね」
 焼きトオモロコシを食べていた。どこで買ったんだよ。
「荷物取りに行くだけだったからな、これから届けなくちゃならない、一人で帰れるよな」
 こっちには目もくれず行きかう人を見ながら
「子供じゃあるまいし」
 生意気ぬかしよってからに。しかしながら俺より強い事実。
「見た目だけなら子供だ」
 皮肉っぽくそういうと食べ終えたトオモロコシを捨ててふむと考え
「それは良いことを聞いた。ちょっとロリコンをから狩ってくる」
 ちょっと何するつもりですか。
「イントネーションに違和感を感じたのは気のせいか?」
「気にするな」
 気のせいではないと言う訳ですね。
「何でもいいけど殺人犯を見つけることを忘れてないよな」
 正直何を考えているか分からない時がある。あぁと小さく息をつき
「大丈夫そっちもなんとかするさ」
「心当たりでもあんのか?」
 思いのほか手っ取り早く終わりそうだ。
「ぼちぼちといったところかな」
 どこから取り出したのか棒付きキャンディーを咥えながらシニカルに笑う
「早期決着になりそうだな」
「さてね」
 そういって立ち上がり背を向けた。
「どこ行くんですか」
 一応引きとめてみるが止まってもらっても困ることに気がつく
「お買いものだよ」
 またシニカルに笑って足取り軽く人ごみに入っていく。
「俺は地道に脚で稼ぎますよ」
 とりあえずは聞き込みか何か、駄目なら遺体現場を調べるか。
「じゃあ後で」
 人ごみの中から聞こえる声に溜息一つついてから「了解」と言って別方向へ歩き出した。


   ◆


 依頼を受けた日から二日目。完全に失念していたお遣いを思い出し急いでマスターに届けモノをする羽目に。
 足が無いと面倒だろうと言われてウルカから貰った(買ってもらった)バイクに跨りマスターの店へと向かう。
 朝からかったるいがしかたない、予定より数時間早い行動になっているがそれもまた一興。早起きは三文の徳ということだし。実際三文得したところで二束三文だが。
 三つ目の信号待ちをしていると視界の端にウルカを捕えた。朝から何をしているのかと行く先に目をやると行列のできたケーキ屋が目に入った。
 何人もの女性やたまに男の人が居たりとか、目を引くような顔をした女性も。最後尾に居る店員さんがボードを持ち立っている。朝からご苦労なことで……。
 ウルカも並ぶのだろうと考えていたら信号が青になっていたのでアクセルをひねりギアを上げクラッチを開きながらバイクを動かし目的地に急いだ。
 その後何回か交差点を曲がり奇妙な道を行く。
 どんどん人が減っていき最後には指で数えられる人数まで減ったところでバイクを止め目的地に到着。ヘルメットを取り店内に入る。入口の鐘が音を立てるのでマスターがこっちを向く。
「行って来てくれたのか?」
 マスターが小さく笑みを浮かべてカウンター席に紅茶を一杯。
「ほい」
 軽くカウンターに叩きつけるようにトンとマスターの前に置く。それを手にしてふたを開けて匂いで確認すると紅茶にミルクをそそぐ。
「飲んでけ」
 そういってマスターは背を向け、珈琲豆を奥にしまいに行ったようだ。一息ついてからミルクティーを口にする。
「甘い」
 ポツリとそう言ってもう一口。紅茶とミルクの絶妙なバランスで醸し出されるまろやかさ。さすがマスターというべきか。

Walking -第2章- ( No.17 )
日時: 2011/01/26 21:54
名前: 深山羊 (ID: /w7jENjD)

 ミルクティーに舌鼓しているとカランカランと入口の鐘が音を立てる。目だけ入口にやると
「あ。」
 自然に言葉が出た。
 入ってきたのはこの間の依頼人の男だった。
 向こうもこちらに気づき何やら慌ててこちらに歩いてくる。
「あの」
 男が切り出してきた。さて、何を言われるのか見物だ。
「申し訳ないんですが犯人の方はまだ」
 ウルカが見当ついてるとか言ってたが俺はしらないから
「いえ、実は依頼内容を変更してもらいたいのですが」
「えっと……。うわっ!」
 全く予想外の言葉に飲みかけのミルクティーをこぼしそうになった。なんとかギリギリこぼさずに済んだが
「詳しく聞かせていただいてもいいですか?」
「お願いします」
 さてさてどうなることか
「この間、偶然なんですが」
 男の表情は真剣そのもの、いったい何を言うのか
「はい」
 適当に相槌を挟む
「殺された彼女が街中を歩いていたんです」
 突拍子の無いこと言われましても
「はぁ」
「僕も言ってて滅茶苦茶だと思います。でも見たんです」
 可能性はないと言えない。というか場合によったらウルカが犯人じゃんそれ……。死人が町にね———ああ。
「もしかして」
 頭で線がつながった。ここに来て一番最初にした聞き込みで聞いた
「はい。数年前から伝播している噂の一つの」
「『黄泉帰り』ですね」
 読んで字のごとくとはこのことか
「はい。毎回毎回首が無くなった人間だけが黄泉から帰ってこれると噂の」
 ピンポイントの理由でのみ無くなった人間を街中で見かけるという。ということは依頼に関しては
「詰まるところ犯人じゃなく蘇ったその彼女を探してほしいと」
「大体はそれで」
 はっきりしない言い方だが間違いじゃないならそれでかまわんさ
「どうしましょうかね」
 多分ウルカなら二つ返事でいいというがめんどくさいのは俺だ。あえて少し考えるフリをする。
 それを見て男は札束をカウンターに叩きつけるように置いた。
「前回の前金は納めてもらっていいです。前金に加算する分として45万用意しました。それに成功報酬に前の65万と45万用意します」
 単純計算で
「合計で200万ってことでいいですか?」
「はい。依頼内容を犯人も見つけられたら見つけていただき優先して彼女を見つけていただければ」
 この男は馬鹿だ、大馬鹿者だ。女一人に200万って……。
 こういうやつが居るから儲かる人間もいるのは確かだが、俺みたいなのとか
「ようするに犯人と彼女を探し出して連れてこいって事ですね」
「概ねその通りです」
 ようやっと納得したのかドヤ顔で頷く。女が生きている可能性を見つけて浮足立ってやがる
 ばれないように一つ溜息をついて。
「僕の一存で変更していいモノじゃないので、一応電話してきて良いですか?」
 携帯を取り出す。
「よろしくお願いします」
 男は合格祈願をする学生の様な顔で頭を下げた。
「じゃあ少し失礼します」
 みっともないな。

Walking-第2章- ( No.18 )
日時: 2011/01/28 20:45
名前: 深山羊 (ID: /w7jENjD)


 店を出て少し曲がった薄暗い所で電話をかける。
 ワンコールが鳴り始めたあとすぐに
『モノクロの玩具の萌子ちゃんでぇーすっ☆あはっ☆いーっぱい可愛がってね☆』

 プツッン。ツーツー。ピッ。

 全く、またかけ間違えたじゃないか、そろそろ携帯変えようかな。あと気のせいか語尾に星が見えた気がする。
 手の中の開いたままの携帯が震え自己主張する。別にお前は悪くないがさすがに頭に来そうだ。
 通話ボタンを押す。
『なんで切るのさ』
 貴様と言う人間は……っ!
「自分の胸に聞け」
 たまには自覚しやがれ変態。
『この無い乳にかい?』
 …………。
「自分で言ってて悲しく無いの?」
 つい聞いてしまった。
『大きいと邪魔なだけだし』
 全く悔しさがこもって無いから本当なんだろうなぁ。
『というか小さくても僕のは感度がいいから』
 なんかどっと疲れる。今回の依頼が終わったらどっか旅行行こう。温泉旅館とか良いかも。
「そろそろ真面目にしてください」
 話を進める為に無理やり切る。
『モノクロんこわーい、ハート』
 ハートと自分の口で言うやつと初めて電話してる。
「口で言うとあざといですよ」
 予想以上にあざとさが染みでることにちょっとびっくり。
『あざといくらいがちょうどいい』
「開きなおらないでください」
『それはそうと、なにようだい?』
 本当にこの人は喧嘩を売るのが大好きな人らしい。
「本当に人が進めたいタイミングで話を進ませてくれませんよね」
『気のせいだ、気のせい』
 気のせいな訳ないでしょうが。
「もういいです。用件は」
 用件だけ手短に伝えると
『うん、構わないよ。というか丁度いいかもね』
 丁度いい?
「もしかして見つけたんですか?」
 仕事が早いというか運のいい奴というか。
『そう言う感度かな』
「日本語でお願いします」
 色々と可笑しいだろうが、あと感じを噛んだのか狙って言ったのかもはっきりしないじゃないか
『どこをどう取っても日本語だよ?』
 本気でどこがおかしいんだというような声色やめろ。
「発言が意味わからなさすぎるでしょうに」
 もっと日本人的な文法にして、というか文法じゃなくて日本語間違えるな
『良かったね、モノクロ君の脳内に僕のエッチなデータが一つ増えたよ』
 こいつの脳内に理性というデータとモラルを書き加える方がいい。
「そんな引き出しはありませんよ」
 残しておいて何の得があるんだか。そーだと思いだしたように切りだしてきた
『写メで送ろうか?』
 声音が高いというか口説くときに使うような声。
「記憶に止めるんでやめてくださいっ!」
 二度と友達を失うような
『もう!我がまま!』
 誰がだよっ!
「依頼内容の追加を承認していただいたという訳で切ります」
『待っ————ツーツー』
 いつもこんな感じで切ってる気がする。
 戻って彼に伝えようか。



 店に入る前に表情を整えて
「どうでしたか?」
 男が不安げな表情を見せる。
「いいそうです」
 それを聞くと安堵の表情を浮かべる。
「では、これが前金です」
 カウンターに札束を置き立ち上がり頭を深く下げて礼をしてから「よろしくお願いします」と残して店を出た。
 それを見ていなくなったのを確認してから溜息を吐く。
「ミルクティーがぬるくなったじゃないか」
 誰知らず一人ごちてぬるくなったミルクティーを一気に飲み干す。
 立ち去ろうとした時店内ではなくさっき出て言った男が戻ってきた。こっちに近づいてくる。
「あの、忘れていたんですが彼女の写真です」
 渡されたのは二人が笑顔で桜の木をバッグにしている写真で本当に幸せそうな笑顔をしている。眼の前の男とは比べ物にならないくらい生き生きとしているのを感じられ哀れみを感じつつも
「わかりました、あずからせていただきます」
 手に取った写真をポケットに入れて軽く頭を下げて男の横を通り過ぎて店を出てバイクにまたがる。
 ヘルメットをかぶりエンジンをかけてアクセルを回し徐々にクラッチを開けるとけたたましい音を立ててバイクが動き出す。
 探偵と言ったら微妙だが足で稼がないとな。