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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 瞼の裏側に焼きついた ( No.1 )
- 日時: 2010/12/27 11:53
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
序章
「みかげ」
僕を名を呼ぶソプラノの声。鈴の音のように綺麗で、いつも聞いていて安心する声だった。
でも、
「ごめんね」
今日だけは、
「許してくれる、かな……?」
とても、哀しかった。
手を伸ばしても届かない、この焦燥感は一体なんだろう。どうしてこんなにも漠然としすぎていて、涙すら出ないのだろうか。
こんなにも貴女を思っていた筈なのに、最後の最後の最期は思いの片鱗すら見せられない。
なんて情けないんだろう、僕は。
どうしてだろうね、それでも泣けない。枯れたのか、消えたのか、涙の一滴すら出てこないよ。
でもね、涙は出てこないけど、自分への嫌悪と憎しみは嫌ってほど出て来るんだ。
こんな自分が憎くて憎くて仕様が無かった。
どうして貴女が、どうして僕じゃないのか、そんな事ばかり考えていた。
だから僕は………………
「 」
この言葉を、胸に刻もう。自分の命が果てるまで。
序章 終
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