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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 葬送楽団 ( No.1 )
- 日時: 2011/01/29 11:03
- 名前: まる (ID: i2WIX6EI)
第一夜 歌姫
そこには一人の少女がいた。
まだかなり若いのだろう。陶器のように白くなまらかな頬に、真っ赤な唇。大きく黒目がちな瞳の上にはふんんわりとした睫毛が揺れている。真っ黒なリボンとレースをふんだんにあしらったドレスから突き出る腕や足は、白く華奢でその黒のドレスとは対照的に雪の様に白く、浮き出て見えるほどだった。肩にさらりと流れる白髪は、本来なら奇異に見えるはずであるのに関わらず、可憐な少女には当たり前のように映えてうつり、より一層彼女の美しさを引き立てるのであった。
小さな舞台に、スポットライトが当てられた。
まるで、夜空に悠然とそびえる月のように明るく少女を照らしあげる。人形のように愛らしく美しい少女は、少ない客を前に堂々と不覚お辞儀をした。
会場から聞こえてくるまばらな拍手。それに答えるかのようにその五秒後頭を上げると、小さな拍手が会場に響いた。
少女は、触れたら壊れてしまうかのような繊細な雰囲気をかもち出していた。糸で吊り上げられたマリオネットのように。
人形のように美しい少女は、大きく息を吸い込んだ。
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