ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

葬送楽団 ( No.2 )
日時: 2011/01/30 19:32
名前: まる (ID: gTez.RDd)

 彼女を支える楽器はない。周りには彼女以外何も無い。
 沈黙の中で、少女はそっと歌いだした。


 
 世界を包む金色の光
 我その光見ることは出来ん

 黒き世界の序章曲
 呪われし忌まわしき唄

 我が身を案じるもの
 我が手つかみそこから引きずり出すもの

 誰一人として我救うものあらず

 我涙を流し苦しみ
 永遠の苦痛と憎しみが

 我の廻りを包み込む

 我ただ一人願う
 
 この暗き闇のなか
 永遠に祈り続ける

 永劫の苦しみを
 我の声聞きし者

 解き放ちたまえ

 どうか

 祈りたまえ

 
か細い少女のものとは思えない巧妙なソプラノが低い天井に響いた。
 人が発することができるものとは思えない、鳥肌が立つほど美しい歌声だった。
 小さい会場の中ので、人々の感嘆したかのようなざわめきが起こった。
 空気を感じさせない透き通った歌声は、さらさらと流れる小川のように、木の葉を揺らすそよ風のさざめきのように、心の奥深くまで染み込み、まるで天気の良い昼下がりに眺めるベランダの花々のように、心を安らかにする歌声であった。