PR
ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 葬送楽団 しばらく放置します(=´;ω;`=) ( No.21 )
- 日時: 2011/02/12 14:19
- 名前: まる (ID: OOsVuLRl)
少女は男と二人、暗い廊下を進んでいった。
見えるのは男の肩だけで、歩くたびにゆらりとその取り巻く空気が揺れている。ぼんやりとそれを見つめながら、少女は促されるように男の後についていく。
なぜ自分が選ばれ、どこに連れて行かれようとしているのか——皆目検討もつかない。
先程の一方的に告げられた内容には説明がいっさい無かった。ただ付いて来るように指示をされたきり、男はそれ以来口を開こうともしない。
抗議すべきなのかもしれない。
この男に付いて行く理由など少女には無いのだから。危険な目に遭うのかもしれない——そうは分かっていたのに、少女は無言のまま男について行く。
「ねえ」
ふいに男は足を止め、後ろを振り返りもせずに少女に声をかける。
「怖くないの?」
男がぽつりと零した言葉に、少女は足を止める。
「えっ……?」
「どこに連れて行かれるのかとか、どうして自分なのかとか…聞かないの?」
男は少女に向き直る。その顔色からは何も読み取ることが出来なかった。きょとんと首を傾げる少女を、男は痛みをやり過ごすように顔を歪めた。
「……可哀想に。きっと、これから辛い思いをするのに……」
その言葉が何を示しているのか少女には分からなかった。少女が口を開く前に——男は、瞬時表情をぱっと変え微笑んだ。
「寒くない?その格好、寒いよね…?」
男は少女の露になっている肩をちらりと流し見て、自分のコートを脱ぎ始めた。
「え、……あの」
紺色のコートを少女にふわりと掛ける。
「そんな格好じゃあ寒いよね。風邪、引いちゃうよ」
PR