ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

葬送楽団 ( No.3 )
日時: 2011/02/19 23:43
名前: まる (ID: r23iY2yR)

  盛んな拍手が飛び交うなか、少女は観客など目もくれず深く一礼すると、舞台を後にした。
  残された観客たちは、後の役者たちが舞台に現われるまで、今もなお脳裏に漂う歌声に酔いしれるだけであった。



          *
 
 
  少女の独奏会が終わり、ざわざわとざわめく観客の中、一人の男が、彼女が居た場所を食い入るように見つめていた。
 「あの子は…」
  綺麗な金髪の男は、顔を歪めた。眉をひそめ、頭を横に振った。
 「……本当に」
  まさか、そんなはずは無い。男は酷く困惑していた。
 「ジェシュア」
  声のする方に振り向くと、そこには奇抜な格好をした少年が立っていた。
  少年はジェシュアの隣に、ドスリと座ると微笑んだ。
 「もう皆来てるよ。ジェシュアが遅いから」
  皆怒ってるよと、少年は言葉を続けた。
  どこか憂いの表情を浮かべている少年は、頬に手をあて、にっこりと微笑んだ。
 「あのコは、当たりかなぁ」
  くすくすと笑いながら、ステージに顔を向ける。