ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 葬送楽団 誰かコメください(´;ω;`)ウゥゥ ( No.9 )
- 日時: 2011/01/17 17:12
- 名前: まる (ID: Hsu/pkT7)
アラウンドの屋敷を取り囲み、村の男たちは扉をこじ開けた。
酷く残酷な方法で、アラウンドは殺された。
怒れる村人たちの手で。
“それ”が終わった後屋敷は堅く閉ざされた。
屋敷は壊せれることは無かった。今までの苦しみと憎しみを忘れないための象徴として、そこを通るたびに思い出すように。
そして、小さな劇団がここを訪れ、何年もの間叩かれることがなっかった扉が開かれた。
そう、少女たち劇団はクレドリュー家の屋敷を使い、今現在公演中という訳なのだ。昔ここでアラウンドが死んだとしても、劇団員たちが求めるのは利益だけで儲かればそれでいい。そこでちょうど村で一番大きな建物を、劇場として使っているのだ。
始めは村人にとって忌まわしいこの屋敷に、客が来ないのではないかと言う意見も出たが、街から遠く離れた小さな村にとって、人はおろか劇団が来るなどという事は珍しく、誰しも好奇心には打ち勝てなかったらしい。田舎村にしてはそこそこの利益が出たと、誰かが嬉しそうに話しているのを聞いた。
もっとも、少女にとって利益などどうでも良い話ではあったが。
金は要らない。必要がないから。歌い続けられればそれで良い。
少女にとって、“歌”だけが自分が生きている“意味”であり、自分が生きていける“意味”なのだ。“歌”自体が“自分”なのだ。
少女は、そっと目を伏せた。
この男——アラウンドには自分よりも大切な何かを見つける事はできなかったのだ。自分を存在させる“何か”を見つけることは出来なかった。
だから、女、酒、そして金で埋めることしか出来なかったのかもしれない。
仲間、家族、恋人、友達。そういった大事なものが居るから人は満たされるのだ。
少女にとってそれは“歌”であったが、とても大事なものであった。
ある意味、アラウンドは哀れなのかもしれない。