ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 嘘つきルナティック ( No.5 )
- 日時: 2010/12/31 18:56
- 名前: 夜深 ◆4QOlS8qZ.. (ID: a6i4.RaK)
*第朔話「嘘つきの憂鬱」*
ふと目が覚めた。
時刻は20時。
ベットの上でいつの間にか寝てしまったようだ。
明日は金曜日。
学校に行くのは、もう疲れた。
明日は体育の授業なんて無いけれど、代わりに苦手な数学が待ち伏せしている。
「ん゛っ」
ベットにもぐりこんで一回転したら、ベットの角で頭を打つ。
痛い。
鈍い、痛み。
それは私の気持ちとおなじ。
もうこのまま部屋の鍵を閉めて、明日の学校を休んでしまおうか。
また先生に、「体調が悪くって」、と嘘の言い訳をして。
そしたらお母さんはどう言うのかな。
お父さんはどんな顔をするかな。
彼らは模範的に仲のよくて優しい両親だから、私の体調が悪いといえば本気で心配して学校を休ませてくれるだろう。
なんで学校なんていう窮屈で居心地の悪い場所で青春を過ごさなきゃならないんだろう。
学校なんていう居心地の悪いとこで、みんながおなじ場所にいて、おなじ授業を受けて、おなじ時間に帰宅するなんて、気持ち悪い。
だいたい、あんなせまいとこで青春を謳歌できるはずが無い。
女子の目は何にでも鋭く光っていて、
男子の目は何にでも鈍く光っている。
じろじろ、じろじろ、と私を見ている。
そんなに見ないで。 もう嘘なんて付きませんから。
ぞろぞろ、ぞろぞろ、とみんなで歩いている。
私の嫌いな、集団行動。
みんな一緒なんて嫌だ。
はみ出物って言われてもいいから、変人でもいいから、
自分らしくいたいと思う。
けど、やっぱり。
嘘ついている限りは、あの窮屈で気持ちの悪い学校という場所が、余計に窮屈で居心地の悪いところになって私を締め付けてしまう。
「お母さん」と大声で叫ぶ。
だだだだっと会談を急いでのぼってくるお母さん。
フン、過保護にもほどがあるっつーの。
「どうしたの、エリ?」
「調子悪いから夕飯いらない。明日学校も行かない」
いかにも調子の悪そうな声色を出す私。
こういうときの演技は、すっごく上手いと思う。
もし私が演劇部に入っていたなら、評判になったかも。
「そうなの。 本当にいらないの?
今晩の夕食はエリの好きなビーフシチューなのに」
「いらない」
小さな声で即答する。
「あら・・・。
じゃあ、そのまま静かに寝ていなさいよ」
お母さんは部屋のドアをぴしゃりと閉めた。
私はビーフシチューなんか嫌いだ。
お母さんの得意料理だって言うから、小さい頃から「だいすきー」って言って食べてきた。
「だいすきー」って言うと、お母さんはとても嬉しそうに笑う。
ビーフシチューの脂っぽいところや肉の切るサイズが大きいところが私は嫌いだ。
だけど、それを言い出せないで、お母さんをずっと騙している。
それにしても。
本当に簡単に騙せてしまう母だ。
そういう単純なところもあんまり好きじゃない。
私は部屋の電気を消して、ベットに付属している小さい電気の方を付けた。
そして、この間買った、ツルゲーネフの「はつ恋」を読みはじめた。