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Re: からっぽMAGIC ( No.12 )
日時: 2011/01/07 19:43
名前: 木馬 (ID: OfqjeFpF)


「染代、空母の中とか詳しいか?」

「いや、全くだ。右も左も分からない」

俺たちは空母の中を右へ左へとさまよっていた。どうしたもんか

「それより先生、作戦かなにかあると教えてほしいのだが」

「ない。強いて言うならお前は能力を使うな」

「なっ!?」

心底意外そうに染代は反論するが、こればかりはどうしようもない
本来なら連れてくるのも嫌だったのだが、いまさらそれを言っても仕方ない
なら、せめて危険から遠ざける

「お前の能力を知っている限り説明してみろ」

「……”欲する蒼き焔”使用者の魂を燃料に心を燃やし尽くす業火を生み出す
一度火がついたら止められず。火を浴びた者は最後、炎の熱と心を燃やされる苦痛に
苦しみながら死んでいく」

「正解。素人目で言うのもなんだが魂が無くなるなんてことはない
消費した燃料もいずれは回復する」

「だったら!」

当然のように反論してくるが仮定の話だ
全てが正解というわけではない

「だが、ノーリスクじゃない。思い出せ二年前のことを
あのときお前は半年間眠っていたんだぞ。忘れたのか? お前のそれは危険なんだ
お前がなによりも分かっているはずだ」

見て分かるほどに落ち込む染代。人を励ますのも怒鳴るのも苦手だ
それでも一人の大人としては危険なことに首を突っ込んでほしくない
この好奇心がいつか身を滅ぼしかねないと。俺は思う

「まぁ……なんだ。俺が本当に助けを求めるときは真っ先に呼ばせてもらう
だから約束しろ。全員助け出して。無事に俺たちも帰ると」

自分でも嫌になるくらいに甘いことを言っている気がする。それが出来たら誰も
苦労はしない。でもそうでも言わないと不安で仕方ない

「ん? あっちが怪しいな。ほら遅れずに来い」

だから不安が嫌で俺は虚栄を張る。一番前を歩く者は誰よりも胸を張らなければ
そう信じて。闇雲に俺はただ歩く