ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: からっぽMAGIC ( No.13 )
日時: 2011/01/15 21:59
名前: 木馬 (ID: OfqjeFpF)

私には先生、籠野ユウという男が全てだ。それは多分、恋と似ている
いや恋なのだろう。

「生きろ! なにもかも捨てて純粋に生きろ!」

そう言われたのは忘れもしないあの日、まだ中学生だった私の力が暴走し
すべてを燃やし尽くそうと暴れ回ったとき、ふらりと現れた先生に私は救われた
だから私は先生を愛している。苦しみから助けてくれた先生を

「……私も乙女だな」
「なにが?」

つい声に出してしまった。緊迫感がないな。だがそれがいい
本当は少し怖いから

「まぁいい。どうやら予想通り邪魔しに来たみたいだ」

先生はあまりに意に介していない。怖くないのだろうか?
心強い。あなたがいれば私も強くいれる

「籠野ユウだな」

無機質な声と言うのはこういうのなのか。真っ黒なコートとフードの奥に見える
真っ白な仮面から覗く赤い瞳。そして声。その全てが私たちを飲み込みそう

「……だとしたら、なにかあるのか?」
「ふっ……では質問を変えよう。ユーリ・エンハンス大佐かな?」

聞いたことのない名だ。日本人の名ではないのだろう。だが質問から察すると
先生を指しているように聞こえる

「…………違う。人違いだな」
「そうか。では、あなたの中を確かめると、しよう!」

寒気を感じた私は先生の言いつけを無視し、手から腕、そして全身から蒼い炎を
放出する。それは船内の道を埋め尽くすように燃え上がる。すこしでも触れれば
心を燃やす炎。避ける術はない!

「テロリスト風情では我を止めることは出来ん」
「えっ」

気づいたら私は宙を舞っていた。遅れて全身に激痛が走る
頭が混乱するが世界はゆっくりと進み私は何か壁か床かに叩きつけられる

「次は貴方だ。大佐」

そして男が右手から銀に輝く反った剣を左手からは同じく銀の巨大な鎌を
生み出しそれらを構えてゆっくりと本当にゆっくりと近づいていく

「くっ」

先生は手を前に突き出す。あれは二次元の壁。実体がない決して壊れない絶対の壁

「我はルシフェル。この世界に満ちた業を消し去る者。貴方は幸福だ」

男が剣を振り上げる。私はそれを止めようにも体が動かない

「一つは孤独であるがため悲しまない」

壊すのではなくなにか自然に消えていくように先生の壁が消えていく

「一つはあなたは業を多く背負っている」

剣の次は鎌を振り上げる。頼む私。動いてくれ

「そしてあなたは我に出会った」

先生を凶刃は襲う