ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: からっぽMAGIC ( No.3 )
- 日時: 2011/01/02 13:52
- 名前: 木馬 (ID: OfqjeFpF)
朝の静けさは好きだ。空気が澄んでいて頭が冴える。
この少しの時間がたまらなく好きだ。四年前、災害が起こった当時
俺は十九、進学もせずに部屋で引きこもっていた。それでも朝だけは外へと出た。
コンクリートの地面を一歩一歩進みながら変わることがない景色に目もくれず
歩き続ける。寮から学校までは徒歩三十分程度の距離。異能の中には
空を飛ぶとか脚力が増大するとかいうものもある。きっとそう言う奴らから
見れば歩いてる奴の気持ちなんて分からないんだろう。
それはほかの奴にも言える。他人ができないことを出来るようになった時
人は人が考えていることを理解できなくなってしまったのかも知れない
そんな哲学じみたことを考えながら学校へとたどり着く
日本でも有数の広大な敷地の中で作られたこの学校は能力を制御する術などを学び
卒業するまでに不安定な十代の少年少女を社会にとけ込ませるために作られた
という名目で今や肩身の狭い日本政府が国際的な配慮のため存在する
日本をアピールするための広告塔だ
「おはようございます……って誰もいないのか」
職員室へと入っても物静かなものだ俺は机に鞄を置き、電気ポットで水を沸かす
新人の義務だろう、俺はこうして毎朝後からくる教員のためコーヒーを用意する
別に苦ではないから飽きずに続けていることだからいいんだが
「せんせー、おはよう!」
再度言う、うるさいのは嫌いだ。これは変わらない事実だ。
だから人の少ない時間帯に学校へと来る。にもかかわらず毎朝俺の静寂は乱される
「帰れ、邪魔だ」
俺は扉を壊す勢いで入ってきた女生徒に向けて冷淡に告げる
「酷いっ! 教え子に対してその物言いは教師として最悪だよ」
知らない。ズカズカと近づいてくる生徒の名は三島シオリ、寮母さんの妹で
亜麻色の髪と顔立ちは瓜二つの朗らかなイメージだがこっちのほうが
質が悪い。明るさは俺の何十倍もあるだろう。多分落ち込むなんてことを知らない
いわゆるアホの子だ
「赤点は教室で自習しておけ、以上帰れ」
「ふんっだ。いいもんね。授業でどうせ会うんだもんね」
それだけ言い残してシオリは去っていく。一体なにしに来たんだ?
会話の中で目的を忘れるあたりアホなんだろう。ちなみにシオリは俺のクラスの
下から数えて六番目の学力だ。そうあんなのがまだ五人もいる
早朝一発目から頭が痛くなった俺はその後コーヒーを二杯も飲んだ。