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Re: 不幸少年の日常+非常識 ( No.24 )
日時: 2011/01/10 13:25
名前: 魑魅魍魎 ◆UTmvEGhzaE (ID: OeXJRIuY)




「……己が立場を弁えよ。愚かな弟」

確かに心臓に刺さっているはずの短剣。だが、女王は苦しげなくその短剣を引きぬく。

裂けた肉が内側から蘇り、流れる血も止まる。……これが、不死族。



一方、帰流の方は床に倒れ、その場から動かない。やがて、肉も骨も全て溶け、消えてしまった。



現場の悲惨さに誰もが声を失う。誰もがバツの悪そうな表情をしていた。

「……覗き見とは、行儀が悪いな」


ほら、やっぱり知っていた。女王は全て知っている。これからどうなるか。


「貴様等も聞いたろう? 私は嫁に行く。お前たちはもう自由だ」

恐ろしいほど冷たい瞳で俺らを見ていた。何を想っているのか解らない瞳。


「……そんなのってねぇよ。勝手に巻き込んどいて、勝手に終わらせんのかよ!?」


ベランダの手摺に座って、俺を拉致して、仕舞にゃ捨てるのかよ。
知りたくなってきた魔法のことだってまだ中途半端。


「……貴様に何が解る」

冷たい声と瞳。迂闊に近づけば殺されそうな雰囲気。


「……解るよ。俺たちの為に好きでもねぇ奴の子を産むつもりか?」

怒りに震える声で呟いたのは祥雲。拳を握りすぎて白くなっている手。


「ホント、勝手すぎるよ。僕だって女王を信じて付いて来た。それなのにそんな勝手な結末ってある?」

と、呆れた様な声の緋雀。でも、どこか親に捨てられて泣き叫びたい子供のような感じがした。


     「私の事が解るのなら───」


女王にしては珍しく歯切れが悪かった。


          


           「私を殺してくれ」