ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 「序章」 ( No.1 )
- 日時: 2011/02/02 15:55
- 名前: 朱音 (ID: JYHezvC8)
東京都、異ノ国市。
戦前繁華街として栄えたこの街は、当時「東洋一美しい」と謳われた東京の中心だった。
そしてその街並みは戦後も失われることはなく、今もそこは繁華街で溢れ、外国人や若者達の姿も多く見られる。立地の良いそこには百貨店も多く進出し、ビルも多い。傍目にはなんら問題のない街に見える。
だが、それは違った。
東京都の中心、異ノ国市は、酷く治安が悪かったのだ。
学生による万引きなど序の口。路地裏ではカツアゲが絶えず、深夜になればオヤジ狩りや強盗、女子高生が連れ去られる事件などが相次いでいる。
治安を悪くしているのは学生だけではない。極道の本家も多いこの街では、昼間から銃声が聞こえることすら珍しくないのだ。極道に追い詰められた借金の保証人などが電車に飛び込み、人身事故を起こすことさえ多々ある。
そしてもうひとつ、この街を蝕む問題がある。
マスターピース
生まれながらにして「異能」を持つ人間——「神宿る人間」だ。
それが世界で最初に生まれた地、それがここ、異ノ国市。善に活かされなければいけないその能力はいつしか闇に生きる者の特権となり、現在本当にこの街を仕切っている者は「神宿る人間」だとも噂される。
「神宿る人間」は、この街では十人に一人の割合で現れる。その能力は個人によって違うが、善にも悪にも活かすことのできる能力がほとんど。だが、その能力は大半が悪のために使われてしまっているのが現状。「神宿る人間」の能力の中には、簡単に人を殺傷出来るものも多く含まれ、犯罪に使われるケースが後を絶たない。
そんな街の問題を、警察が全て処理できるわけがない。
ピースキーパー
そこで市が作った機関、それが「風紀委員」である。
「風紀委員」は簡単に言えば学生による組織。仕事は主に管轄内のパトロールや、不良学生の取り締まり。異ノ国市に訪れた外国人観光客のガイドなどもたまに務める。
この組織の一番の特徴は、それを構成する幹部の多く——ほとんどが「神宿る人間」だということ。
市は街の自治を学生にさせると同時に、悪用されぬように「神宿る人間」を若いうちから保護することも考えたのだ。
異ノ国市全体は東西南北四つの区に分かれており、「風紀委員」もそれに合わせて四つ部署がある。構成員はほとんどが中高生、まれに強大な能力を発生させた者は、幼稚園児、小学生から「風紀委員」に入ることもある。
そして、「風紀委員」全体で最も能力(体力、知力、戦闘力)が高いものが、それの頂点——「風紀委員長」に選ばれる。
平成二十三年今現在、十四代目「風紀委員長」に選ばれているのは、東区に住む中学二年生——朝岡日向(あさおかひなた)、であった。