ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 世界の終わりと君は言うけど ( No.3 )
日時: 2011/01/08 19:55
名前: 憐蒼 ◆jj0uawQerM (ID: JVqy14aC)

■序章 

「なあ、なんかこの世界って不思議に思わねぇ?」

雲一つもない夏晴れの空の下、授業開始の鐘がかすか遠くに
聴こえる屋上で健斗は言った。

「不思議って?」

俺は飴が大量に入った制服のポケットを
探りながら聞き返す。

「今俺らがこうしてる間にさ、他の奴はちゃんと授業受けたりとか
してるんだよなぁ・・・って思ってさ」

「・・・なにお前、授業受けてぇの?」

「ばーか。そういう訳じゃねぇよ」

健斗は空を見上げる。
その横顔を見ながら、俺は適当にポケットから取り出した
飴を口に入れた。

—サイダー味。

パチパチと、炭酸が口の中ではじける。

「たださ」

んー?と適当に返答する俺の隣で、健斗はボソリと言った。

「何か世界が壊れそうな、そんな気がするんだ。」

「・・・・・・ぶはっ」

やばい。
何だコイツ、何言い出すかと思ったらこんなことか。

そんなことを考えながら俺は腹がよじれるくらい笑った。
世界が壊れるって、どんなだよ。と1人でツッコミを入れるが
口には出さない。

なんせ、俺は今飴をなめているのだ。

笑ったことで大好きなソーダ味の飴を噛んでしまった。
これ以上何か話して、小さくなったソーダ飴がなくなってしまう
というのはあまりにも惜しい。
—他にもたくさん飴はあるのだが。

だが、いつもふざけてる健斗がこういうマジメっぽいことを言うと
似合わなさすぎて笑ってしまう。

笑う俺を見て健斗も、ふっと笑った。

「やっぱ、ありえねぇよな。俺の勘違いか」

「そそ。本当に世界が壊れたりしても、一般人の俺らには
何もできないしー」

そう言って俺は、欠片しか残っていないであろうソーダ飴を
飲み込んだ。

だが、いつもは飲み込めるはずの飴の欠片が喉に突っ掛かる。
そのせいで、咳が出る。

俺は欠片を飲み込もうと必死になりながら思った。

世界がもしも本当に終わるとするなら
その時俺に何ができるのだろう、と。