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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 雨待ち人。 ( No.7 )
- 日時: 2011/01/08 16:04
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
三年前、恋人が死んだ。
まだ高校生にもなっていない青春時代に、哀しい死に様で。
そして俺は取り残されて…………
………………何をしているんだろう。
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崖から一輪の赤い花が舞い落ち、夜の空を映し出したような黒い海へと浮かび、沈む。
そして次々に花が落ちてきて、海に浮かんでは沈んで消えて行く。それを人の命のようだと描写する者もいるだろう。
しかし、満月に照らされた少年、暮羽ルイにとってはどうでも良い事だった。
花束から花を一輪ずつ取り、崖から落とし海へ沈むのを見たらまた花を一輪落とす。そんな事を淡々と続けている。
表情には笑みも怒りも浮かんでいない、無表情。これが任務や仕事だとでも言う風に冷静にそれを続けていた。
「雨はまだ降らないのか……」
ルイは突然そんな事を呟いて空を見上げる。
空はとにかく真っ暗だったが、淡い光に包まれた月がぼんやりと夜空を照らしていた。
そして、確かに空に雨は降っていない。少年は暫しの間夜空を眺めていると突如上を見上げたまま花を一輪取り、落とす。
ぽちゃん、とほんの僅かな音が聞こえたかと思えば花はすぐに沈む。
——————あの時みたいだ。
ルイは表情を少し曇らせながらまた花を落とす。……と今度は面倒になったのか花束を一気に崖から落とした。
ばらばらと花は舞い落ち、少々激しい音を立ててから海に沈む。
「……帰るか」
ルイは花が全部沈むのを見てから崖を後にして、歩く。
着ている黒いジャケットのポケットから青い眼鏡を取り出して掛けると、微笑みを浮かべながら夜道を進んで行った。
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