ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 雨待ち人。 ( No.13 )
- 日時: 2011/01/08 21:20
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
ルイは暫く黙りながら歩いていた。
———花束ぶちまけちゃったな……。あれ、高かったのに。
自分のやった事に後悔しながら肩をすくめて溜息を着く。
そしてふとルイが足を止める。其処は日本の平均的な中流家庭を示す一軒家で囲まれているような住宅地だったがルイが目を向けたのは一軒家ではなく、マンション。
……しかしかなり高層で世に言う“高級マンション”と言う感じのマンションだった。
明らかに周りの一軒家とは違うそのマンションにルイは苦笑しつつも扉へと足を進めた。
何しろ、其処が彼の家だから。
そしてルイは慣れた様子で番号を押し、インターフォンに向かって、
「……あーきー」
と呟いた。
すると“あき”と呼ばれた人物らしき声が返って来る。
「遅い」
「はいはい、秋さんごめんって」
やや怒っている様子である秋の低い声にルイは全く動じず、全く焦らずに謝罪の言葉を述べた。
すると返事こそ帰って来ないがマンションの扉が開き、ルイは再度肩をすくめながら扉の中へと入る。
「……」
扉の中へ入ると大理石のような感じの石で出来た床を歩き、ポケットに両手を突っ込みながらまた黙っていた。
しかし奇妙なくらいに表情の笑みは崩れていない。崖に居た時の無表情とは正反対の、笑み。
何を考えているのか全く分からなく、何処か浮いているような表情と雰囲気がルイに漂っているようにも見える。
しかし当のルイはそんな事など全く気にせず(少なくとも建前は)自分の部屋へと向かった。
———秋の奴、機嫌直ってれば良いけど。
……自分と、秋の居る部屋に。
一回の一番奥まで着き、“119号室”と書かれた札を確認してからルイはポケットから鍵を取り出し、扉を開ける。
「お帰り、ルイ」
「……ただいま」
そして一番に目に入った機嫌の治っている様子の秋と話しながら靴を脱ぎ、玄関から上がった。
秋は染めて痛んだ茶髪を弄りながらルイをまじまじと見つめてから、ただ一言
「また墓参りにでも行ったのか?」
と言った。
ルイはイエスともノーとも言わない曖昧な返事をしてから秋と共にリビングへと入る。
そしてジャケットを脱いでハンガーに掛けてからすぐ左にある台所へ行き、コーヒーを淹れていた。
「……いつまで経っても慣れないんだよ、墓参りって」
「普通そうじゃねーの? と言うか三年経ったくらいで慣れるとか逆に気持ち悪い」
「三年って意外と長いよ。ぼーっとしてるだけの秋以外はね」
うるせぇ、と秋は舌打ち交じりに言ったがルイは無視して棚からカップを二つ取ると静かに溜息を着いた。
「三年って意外と長いよ……」
先ほど言った自分の言葉を復唱しながらルイは再度溜息を着いた。