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Re: 雨待ち人。 参照100突破しました ( No.45 )
日時: 2011/01/11 06:57
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)


「はぁ……」


悪い夢見のせいで朝まで眠ると言う手段がなくなってしまった。
けれど家に入り浸っていても嫌だ。個人的に。
……さっき外出たばかりだけど、行くか。
軽く溜息を吐いて黒いジャケットを着て、ソファーで寝ている秋に適当な毛布を掛けてから玄関へと向かった。
夜な夜な家に出て何かをする人何ていないだろうなぁ、と妙に客観的になりつつ扉を開ける。


「今日は月が綺麗ですね」


……開けた瞬間見えるのは白いパーカーと黒いズボンと女の声。勿論コイツが誰かは知っている……名前と素性以外は。
コイツは月を見ながら人の家の前に立つ不審者こと“占い師”。……あ、職業の名前でもあるけれど俺はそう呼ばされている。
変な人で、俺も変な人なのか良く遭遇する。


「……雲がかかって良く見えませんよ」
「いや、月はほんの少し淡く見える程度が一番綺麗なんですよ」
「…………そうですか」


占い師はパーカーを被って唯一見える口を三日月のように吊り上げて不気味に笑った。
月評論家か、お前は。と一瞬ツッコミたくなったが面倒なので止めておく。
そして占い師は占い師のくせに俺のそんな心情などは無視してパーカーから一枚のカードを取り出す。
何のカードかと思えば………………悪魔?


「貴方、少し運が悪くなっているようですね」
「墓参りの直後だからですよ」
「…………事故にあう危険性がありますね。ラッキー食材はトマトスパゲティです」


話は無視か。そしてナポリタンだよな、それ。
ツッコミ所満載の占い師の言葉を軽く聞き流しながら俺は通路のフェンスにもたれ掛かるようにして空を見た。
雲に隠れて少ししか見えない。これの何処が綺麗なのかと占い師に問いただしたくなるが、止めた。
どうせまともな答えなんか帰ってくるわけないだろう。


「それでは貴方にも月の恩寵がありますように……ふふふふふふふふふ」


占い師は奇妙な笑い声を上げながら足早に去って行った。
一人残された俺は明日の朝飯はナポリタンにしようと密かに考えてました。はい。