ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 雨待ち人。 参照100突破しました ( No.56 )
- 日時: 2011/01/16 09:51
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
「月の恩寵、ねぇ……」
一人でボソッと独り言を吐いて溜息を着く。
昔は天体観測をしていた時期も有ったけれど三年前に恋人が殺されてからは何故か月が好きになれなかった。
金色や銀色に純粋な光で輝いているのが嫌いなのかもしれない。まぁ、理由なんか知った事か、何だけど。
どうせ裏側は隕石やクレーターで傷だらけのくせして妙に輝きたがる。そんな月が嫌いなのかもしれない。
……自分みたいだな。
ふとそんな自虐的思考に陥ったので頭を振ってから家の中へと入った。
と、同時に両肩に物凄い衝撃が襲ってきた。
「何処行ってたんだよ」
……えっと。秋さんでしたか。
物凄い鋭い眼光を飛ばして俺をじろりと睨んでくる。何があったのか……あぁ、俺が一人で外に行ったからか。
「明日の朝飯考えてた」
「嘘言え」
まぁ、占い師に教えてもらったんだけどね。ラッキー料理ってやつ。
秋は痛いくらいに肩を掴んでいてちょっと突き飛ばしたくなった。いや、無理だけど。
秋はテニスサークルなるものに入っていて良くサボっているけど、力は強いので。
「何で一人で出て行くんだよ」
「いや、別に出て行くつもりじゃなくってさ……」
「じゃあ、何だって言うんだよ」
無駄に怒鳴らずにまぁ怒りは隠しきれていないけれど、一応は冷静だった。
……本当に出て行くつもりじゃないんだけどなぁ。と言いたかったけれど、止めておく。
どうせ信じてもらえる訳がない。
「秋、俺は別にお前を置いて出て行く事なんて……「嘘だろ。お前、あの日から此処に来るまでずっと死のうとしてただろ。だから大学になった時俺のルームメイトになれっつったんだ。今更お前が死のうとするなんて俺h「ストップ」
感情を爆発させて言葉をつらつらと並べてゆく秋の口を人差し指で押さえて静止する。
……まぁ、大体が事実なんだけどさ。自殺しようとしてたのも、秋がルームメートになろうって言ったのも。
秋は、やや間をおいてから俺の表情を覗き込む風にしてまた喋り始めた。
「お前……何で自分を責めるんだよ。大体アレはお前のせいじゃないだろ? 芹澤晴香と芹沢悠香のじk「黙ってろ!!!」
秋に感情的だの何だの言っておいて結局俺も怒鳴っていた。自分を止める暇も無く、本当に感情的に。
そして呆然とした表情の秋をじっと見ながら、
「………………あれは、俺が悪いから……。晴香を殺したのは俺も同然だ」
と、言って部屋へと戻った。
芹沢悠香。
三年前に俺の恋人を殺した、逃亡中の犯人。
芹沢晴香。
三年前に殺された、俺の恋人。