ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 雨待ち人。 ( No.70 )
- 日時: 2011/01/18 21:01
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
公園からマンションの間の道はやけに急な坂がある。自転車では登れないだろ、と言うくらい急な坂。
時々ごっつい高校生とかが力試しで登ろうとして挫折するのを見る事もあったりする。
…………そんな坂を、現在登っている訳なんだけど。
「はぁー……」
ふと溜息を着いてみた。自分の中に溜まっているドロドロした何かを吐き出す風に、重く。
まぁ実際は何も吐いていない。吐けたら、どれだけ楽なんだろうか。
そんなやや感傷的な思考に陥り、真白さんと話した事を思い出してみた。
空は相変わらず眩しい茜色で手を繋いだ高校生のカップルがちらほら見える。平和平和。
(“恋人を殺した人に復讐しようと思わないの?”……か)
両手を頭の後ろに組ませて歩みを進める。坂は上の方へと行き、段々坂が急になってくる。
別に、復讐しようと思った事が無いと言う事は無い。
寧ろ一時期は犯人を殺してやると毎日、毎時間、毎分、下手すれば毎秒考えていたほど。
今考えればそんな自分が怖……くないか。今の俺もそんな事を考えていたりするし。
(……真白さん、俺の衝動がもう錆付いていると思うなんて間違ってる)
夕さんと繋がりのある、若々しい顔をした真白さんを思い浮かべる。
そして感傷的な笑みを浮かべながらまた空を見上げてみる。やっぱり眩しい茜色をしていた。
気付けばあの時のように犯人を殺す想像をしていた。この想像が映像として流れたならとてつもなく危険なくらいの想像。
鋭い刃で肉をいともあっさりと切り裂き、紅い血飛沫を上げ、恐怖に満ちた瞳が……………………………………………………………………………………。
………………。
「っ…………」
目がチカチカと赤や緑色を映し出し、喉の辺りに不快な何かがこみ上げて来る。
“また、想像し過ぎたか。”
そう心の中でつぶやいてから喉にこみ上げて来る何かを飲み込んで、再度坂を登り続けた。
(またフラッシュバックか……。いい加減、慣れて欲しいもんだ)
罪悪感、に。
そんな事を思っているといつの間にか坂の上へと着いた。空が一番綺麗に見える坂の上は、この町で密かに人気らしい。
まぁそんな人気にあやかって突っ立ったまま空を見つめてみた。
「眩しい……」
不意に見える夕日に目を細めながら空を見続けた。理由なんて無いけれど。
強いて言えば危険思考を持つ自分から現実逃避したかったのかもしれない。
「帰ったら何す、」
るかな、とは言えなかった。
背中から強く押してくる力を感じて、それを真っ向から受けて、見事転がって坂から転がり落ちていたから。
……誰かに押されて、落ちていたから。
「う、わ、あああああああああああっ!!!」
そして無様に叫び声を上げながら落ちて行く事しか出来なかった。