ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 雨待ち人。 ( No.79 )
- 日時: 2011/01/23 11:01
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
- 参照: http://雨待ち人。更新なうです←
落ちる、落ちる、くるくる回る。
何回も前転を繰り返して、急斜面な坂を転がっていた。
まるでこれを映像として見ているかのように冷静……にはなれなかった。
頭を道に打っているから馬鹿みたいに痛いし、気持ちが悪い。
道には誰もいない。
車も動物も人も何も無い。あの時みたいに。
いや、あの時なんてもっと恐ろしかったのだろう。
「う、わ、あああああああああああああああああああっ!!」
そして俺は馬鹿みたいにぐるぐると回る事にしか出来ない。
無力。無力。馬鹿みたいに、無力。
頭を打ちすぎておかしくなったのかもしれない。段々意識が薄れていく気がした。
さっき目に映っていた赤色と緑色の光も消えて、段々、視界が霞んでくる。
(何だ、これ……。死ぬのか? 何も出来ず? あぁ、そんなもんなのか?)
結局。
そして俺は気づけば転がらなくなっていた。
けれど、体中が痛んで起き上がる事も、声を上げることも出来ない。
意識も薄れてゆくし、本当にこのまま死ぬのかもしれない。
寒い。
冷たい。
眠い。
……案外、そうなのかもしれない。
そんな事をぼんやり考えていると、俺の目の前に道往く人が見えた。
何とか力を振り絞って手を少し伸ばして、顔を上げてその人を見た。
その人は、何故か黒いフードを被って顔を隠しているけれど、どうでも良い。
俺は手を伸ばす。
するとその人がしゃがんで、少し顔が見えた。
(嘘……だろ……?)
そして俺は視界の霞む目を見開く。
その人の右ほほには、傷があった。
見覚えのある、いや、見た事のある傷だった。
(お前………………、)
パッパー。
俺の思考なんかよそに、甲高い車のクラクションが聞こえる。
けれど、路上にぶっ倒れている俺なんか気にせずに進んでいた。
その人は目は見えないけれど、口角を吊り上げていて、明らかに笑っていた。
(助けてくれるわけ、無いよな…………)
お前がお前だし、当然か。
今更こん、
あ。