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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 雨待ち人。 ( No.91 )
- 日時: 2011/01/30 11:16
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
- 参照: http://雨待ち人。更新なうです←
「俺……生きてたんだね」
俺がやや力なくそう呟くと、秋の瞳から涙がボロボロと零れ落ちる。
かなり心配してくれたのだろう。秋は嬉しさと安堵と怒りが混じって、何とも言えぬ表情をしていた。
そして、この前より数段は優しい力で俺の肩を掴む。
「馬鹿、言うな、よっ……! お゛れっ、お前が死んだら……っ、馬鹿ルイっっっ!!!」
「…………ごめん」
そう言うと、秋は首を振りながら涙を拭う。
幸い俺今居る所は病院の個室で、秋の泣き顔は俺しか見ていない。
そして涙を拭いながらもまた新しい涙を零す秋に、俺は感謝しつつもやや訳の分からない気持ちに襲われる。
哀しいとも、怒りとも、恐怖ともつかない。
体中に何かが這うような、鳥肌の立つような……気持ち悪い、何かに。
(……晴香)
心の中で、彼女の名前を呟いてみる。
いつも、さっきの夢の中でさえ無邪気に微笑んでいた彼女。
…………殺されて、もう居ない彼女。
…………生きていて、無様な俺。
相容れない(あいいれない)、俺達。
(やっぱり俺らは、会えないんだな)
そう思い、俺は秋を宥めながら苦笑した。
やっぱり此処にはいられない、夢の中でそう呟いたのは間違いではない。
俺はまだ、死ねない。
秋も居るし、占い師も居るし、真白さんもいるし……まだ俺を必要とする人がいるから。
……晴香、ごめん。
「秋……」
「…………何だよ」
……俺は、いつでも最低な人らしい。
「…………」
だから、相容れないんだよな。
「…………何でもない」
「は? ……意味分かんねぇ」
秋がそういって不思議そうに首をかしげるのを見て、俺は再度苦笑した。
まだまだ俺は、あそこに行けないと確信しつつ。
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