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Re: ツァラトゥストラはかく語りき-アリス達の運命- ( No.11 )
日時: 2011/01/10 13:03
名前: 魑魅魍魎 ◆UTmvEGhzaE (ID: OeXJRIuY)

Ⅰ  「赤いアリス」


「忌々しい吸血鬼よ! 今、ここに討ち滅ぼす!!」

凛々しい男の声。キラー家長男のレニールの声。レニールの傍らには、ローズが存在していた。


沢山の家来を打ち倒し、吸血鬼が待つ王座の間へと走り続ける。

全身に返り血を浴び、剣を振るい、多くの命を奪いながら。


「……馬鹿馬鹿しい」

そう冷たく呟いたのはオウガ。そして、己の武器の刀を腰から抜き取り、構える。


その瞳は「使い物にならない家来はすっ込んでいろ」と言っているようだ。


「吸血鬼一族よ! 今一度滅ぼさん!!」

と、レニールは果敢にオウガに挑む。果敢の対価は、恐らく死。


「貴方はわたしとよ」

リリアーヌの前には、ローズが立っている。そして、薔薇の花弁を刃とし、彼女に向けて飛ばす。


「……」

彼女は動揺する風もなく、静かに瞳を閉じる。薔薇の花弁は、その時生まれた黄金のバリアに吸い込まれる。


「くっ……!!」

レニールは恐るべき身体能力を持つ吸血鬼相手に苦戦しているようだ。
素早い刀の動きは目で捉えるのがやっと。彼は防戦一方だった。


「レニール様っ!」


ローズが悲鳴を上げたときにはもう遅い。オウガの刀は、レニールの心臓を捕らえていた。


彼の左手の薬指の指輪が、灰のように黒くなり消える。


「……そんな……」

絶望に満ちた声色のローズの指輪も灰と化す。


   そして、二人の身体も灰と化して消える。



        それ以降、二人はキラー家に戻ってこない。