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Re: 黒薔薇の城のアリス ( No.45 )
日時: 2011/09/29 20:52
名前: rara (ID: 9QYDPo7T)

*黒薔薇の城のアリス 5 




ある日、レオが私にこう言った。

「黒姫様、白薔薇の国の頂点にユリス様が君臨したようです」

 それを聞いた私は、手に持っていた赤い薔薇を切り裂いた。
 今の私はそんなことさえ、喜べない。
 例え実の妹でも。


 私は床に散らばった赤い薔薇を見て静かに言った。

「……妹を、殺しなさい」


 私以外に女王なんていらない。
 世界の女王は私一人でいい。
 ユリスにも、消えてもらわなくては。


 しばらく沈黙が続いたがレオは答えた。
 その答えはもちろん、

「はい、かしこまりました」


 レオを先頭に、白薔薇の国を滅ぼしに向かう。
 民衆などに用はない。
 殺すのは女王、そして実の妹のユリスだけ。


 とうとうユリスは追い詰められた。 逃げ場はどこにもない。
 周りには兵士たちがいるから。

 レオがユリスに近づく。

「これはあなたのお姉様、アリス様の命令……」

「お姉様って、まさか……?」

 ユリスは後ずさりをするがもう逃げられない。
 サイドテーブルにぶつかり、花瓶が倒れる。
 花瓶は派手な音を立てて砕け散った。
 その音が、部屋中の空気を凍らせた。

「そうです。しかし命令には逆らえません……さようなら」

レオは灯油を撒き火をつけた。

「いやあぁぁぁ……!!」


 白薔薇の国は一瞬で赤の王国と化した。
 立派だった城は、瞬く間に炎に包まれた。



 これで邪魔者は消えた。
 そう思っていたのに。


 あいつは生きていた—————。