ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 黒薔薇の城のアリス ( No.97 )
日時: 2011/10/03 00:17
名前: rara (ID: 9QYDPo7T)

*黒薔薇の城のアリス 9 




 私はユリスの耳元で囁く。

「ハッピーバースデートゥユー……」

 ユリスは満月を見上げながら泣いている。

「お姉様、もうやめて!!」

 ユリスが叫ぶが、私は聞く耳も持たない。
 祝いの歌を歌い続けた。

「ハッピーバースデートゥユー……ハッピバースデーディア……」

 生暖かい風がさっきよりも強く吹く。
 ユリスの長い髪は激しく舞い上がる。



「嫌ぁ————!」



「ユリス……」





 私はユリスの背中にナイフを刺した。



 風が一瞬にして止んだ。
 部屋の中が一気に静まる。


「ハッピーバースデー、トゥユー……」


 ユリスの純白のドレスは真っ赤な血で染まっている。
 その遺体を見下ろして静かに笑い、そして言った。


「おめでとう、ユリス。そしてサヨナラ—————」




 これで女王は私だけ。
 ユリスは死んだのだ。

 ユリスの遺体の上に、真っ赤な薔薇の花を一輪置き、静かにその部屋を去った。











 白薔薇の国を出た私たちは黒薔薇の国へ向かう。
 人を何人も殺してきた私は何の罪悪感もない。
 むしろ、快感だった。
 後悔なんかしていない。



「さて、今日はもう寝ましょう」



 私は深い眠りについた。