ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 籠の 中の アリス ( No.2 )
日時: 2011/01/11 15:07
名前: 白螺旋 ◆gyKWDbomo6 (ID: e.JI7EiC)

/ お茶会ノスタルジア 01



「……りさ…… 有紗……」


 どこからか、聞き慣れた幼い声がした。

 デジャヴだろうか、こんな体験を前にもしたことがあるような気がする。
 声は違ったかもしれないけれど。

 私はここで、自分を呼んでいる人に反応するべきだろうか。
 けれどそうしても、きっとつまらないと思う。

 少なくとも私が今いる、心地よくて温かいこの場所から、強制的に放り出されそうな……
  

 
「——有紗!」



 突然、耳をつんざくような声が思考に入り込んできた。

 そこでやっと私は現実に引き戻される。


「……………あ……?」


 ゆっくりと、腕にうずめていた顔を上げる。
 視界に広がる光に、思わず眉をひそめた。


「有紗、爆睡しすぎだって…… もう終礼終わりましたよ!」


 声の方に首を向けると、見慣れた顔がそこにあった。
 

「あ…… 早苗……」


 眠い目をこすって、重いまぶたをなんとか持ち上げる。

 とりあえず辺りを見渡すと、ここが間違いなく自分の教室であることが分かった。
 つまり居眠りをしていた、ということも容易に理解できる。


「おはよっ。
それにしても、有紗が寝るなんて珍しいねー」


 改めて早苗、声の主を見た。  
 
 彼女は自分の鞄を持ち上げながら、早くも「帰るよん」なんて呟いている。ちょっとは待ってほしい。

 私は慌てて席を立ち、鞄の用意をし始める。