ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: となりの駄菓子屋さん(霊的) ( No.12 )
- 日時: 2011/01/14 23:46
- 名前: 黒 ◆IZUTPCz4Po (ID: Aw5kQYTw)
ズズズッという豪快な音ともに、回っている煙管の軌道通りに煙も渦巻く。
「かなり手が器用な様子」と手帳に書き記した。
「それでは次の質問ですが——」
私は一旦書いている手を止め、猫又さんをしっかり見つめる。
「昨日のあの事を覚えていますか?」
ここからが本題だ。
ペンを持つ手に力が自然と入る。
猫又さんは、静かに微笑むと湯のみを口にゆっくりと運んだ。
今度は静かにすする。
「やっとその質問が来ましたか……」
やっと? 待っていたんですか?
「えぇ、待っていましたよ……僕もあなたと話がしたかったんです」
「そんな……初対面で——」
「新聞部の取材という肩書を使ってここに来たのでしょう? あなたがこの店の目の前に居る時、待てなくて少し早いお出迎えをしてしまいました……きっとこんなところに来る人なんであなたくらいしかいないので——少しびっくりさせてしまいましたね、お詫び申し上げます」
猫又さんはそう言うと、深く頭を下げた。
静かに下げられた頭は止まることを知らず、そのまま直進。案の定、テーブルにおでこが当たった……。
ソファの背もたれに頭を預け、痛みに耐える猫又さん。
この人は、昭和時代のボケをよくもまぁ……。
空気を変えようと咳払いをする猫又さん。痛みは治まったようだ。
失礼と一言言って、また話を進める。
「僕があなたにした質問は——」
「霊がみえますねという質問でした」
そうです、と静かに笑う。しかし、目は笑っていないように見えた。
「あなたは霊がみえますねという言葉を投げかけてきました。しかも初対面で。なぜそんなことを?」
「それでは逆に問いますが、僕がなぜあなたと話したくて話したくてこの時を待っていたかわかりますか?」
……沈黙。
「あなたが私の来る足音を聞いて早く出迎えてしまった……この原因ですか?」
首を縦に振り、そうですと緩慢な声で答えた。