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Re: となりの駄菓子屋さん(霊的) ( No.17 )
日時: 2011/01/13 21:11
名前: 黒 ◆IZUTPCz4Po (ID: Aw5kQYTw)

 ……この人とは本当に初対面だ。一度会っていれば、その時にその人の魅力が十分に伝わっていれば、またその人に会いたいと思うようなことはよくある。
 しかし、今は違う。まったくの逆だ。
 その時、私が黙っていると猫又さんはゆっくりと喋り出した。
 だけど、それは本当に私に言っているのかわからない。そんな虚ろな目をしていた。周りに漂っている煙がそれを際立たせる。

「僕はあなたみたいな人に初めて出会いました……感動を覚えましたよ。だから、初対面でも無礼と承知で話しかけてしまったんです。でもどうしてもあなたと何か接点を持ちたかった……その純粋な気持ちだけなんです。わかってください」

 猫又さんは、とても聞こえづらいしゃがれ声で呟くように喋っていく。

「僕は霊感がある人というのはわかるようになっています。放たれているオーラと言いますか……雰囲気と言いますか……とにかく、その全てがあなたはピカイチだったんです」

 そしていきなり、猫又さんはソファから身を乗り出し、私の顔を舐めまわすように見つめる。

「あなたは霊が見えるだけじゃない。霊と話せるし霊を触る事も出来るはずです」

 ……私は凄みのある猫又さんに押され、慌てて身を引く。
 しかし、猫又さんは身を引くどころか私を追いかけるように更に詰め寄った。
 黒い瞳孔が大きく開き、ギラギラと輝いている。

「みることは出来ます。嫌な悪霊とか、達の悪い霊とかは感じでわかります……でも、触れたり話したりすることはほとんどないですから、わかりません……それに、霊の種類関わらず話しませんし……」

 か細い声で答える私。
 その時、ようやく自分の体勢がわかったのか静かに向かいのソファに座りなおした。

「本当に?」

 猫又さんは、私の顔を覗き込むようにして聞いた。
 何をそんなに疑り深いんだろう……。

「あ、はい……」

 私は遠慮がちに答えると、猫又さんは首を横に振った。

「この場に及んで嘘はいけませんよ、始祖部さん……」

「嘘?」

 何を言っているんだろう……まったく意図が掴めない。
「僕が挨拶をした後あなたは何をしましたか?」
 猫又さんが挨拶した後……そうそう、手を差し出されたから慌てて——。
 その瞬間、私の思考回路は一旦停止した。
 あの時、もしかして……!