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Re: 世界に届かず彼女は堕ちる ( No.59 )
日時: 2011/01/20 22:55
名前: 緑紫 (ID: rb3ZQ5pX)
参照: りょくしです。ちなみに元ポアロンでっす

「嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃっ……認めん…!!」
少女は相変わらず喚く。

———な…に…。
———僕はいった…い…------------------------?





『ちょっとちょっと!やけに静かだから何かあったのかと思ったら…。
フォーあなた、何呑気に寝てるの!?』

突然頭の、というか顔の上から声が降りかかってきた。
———……誰?
顔がぼやけて姿よく確認出来ないんだけど……。

思い頭をぶんぶん振って、上を見てみる。
「…ウラーヴ?」
自分より5歳年下の女、ウラーヴ=ファオナ。
容姿は自他共に認める程の美人顔。
ガキのくせにね。

「ハァ?何で疑問形なのよ。あたしよあたし!!ウラーヴ=ファオナ!!何っで一目で解んないかなぁー」
呆れ顔で言いながら、ぽす、と小さなソファに座るファオナ。
綺麗なエメラルドグリーンの瞳は疲れたように色を失っている。
「なぁファオナ。疲れてるみたいだけど…どうかしたのか?」
そのソファの隣にある椅子に座るフォー。
「別に何も無いわよ。 あったとしても、あんたに関係無いしね。 出来るだけ他人は巻き込みたくないし」
「他人じゃないだろ」
ずばっと否定するフォー。

———でもこいつが此処まで何かに追い詰められているってことは、相当ヤバいもんなんじゃ…?

「……あんたってほんとバカなんじゃない? 人の役に立ちたいとかいうバカな考えはさっさと消去しなさいっての」
———そーゆーわけじゃ、ないんだけど。

「永遠の魔女。 あいつの所為であたしの生活メチャクチャよ」
———永遠の魔女、ねぇ…。
———どうやら僕は、あいつのこと好きじゃないけど。

立ち上がり紅茶を淹るフォー。
「そいつってそんなにヤバいのか?」
「うん、あの人多分魔法世界を壊す方法考えてるらしいわよ。 喰ってるんだってね」
「は?」
——喰う。
———喰う?魔法使いを? 魔法使いが?

疑問しか浮かんでいないであろうフォーにウラーヴは
「だから、あいつの喰いもんは、魔法使いなの。あたしも昨日喰べられそうになっちゃって」

——異常。
「そいつぁただの異常人じゃないのか。バカでしか無いだろ」
「そんなこと言っちゃ駄目。これでもこの世界を造ったのは永遠の魔女なんだから」
冷めた紅茶を啜りながら、ウラーヴは言った。

「しっかしそう言われれば恐いものだな。いきなり此処に現れたらどうする、その永遠の魔女が」
「その時【場面】になってみないと解んないわよ」
ティーカップのデザインをなぞりながら、事実だけを伝えるウラーヴ。

いつの間にか彼女の瞳も元の生き生きした色に戻っていた。