ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 聖なる邪 ( No.3 )
日時: 2011/01/20 19:26
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)
参照: 続き完了です。

此処は5年前、敵の襲撃を受けた村だ。
そこにはもう人は住んでおらず、

大人でただ一人、あの日の生き残りイレーネ・マグダレーナ・ハイトラー
が院長をしている、孤児院だけがある。



此処に俺は入っていた。


「院長先生、ただいま帰りました」
礼儀正しく挨拶する。
今、俺は15歳だ。


「あら、お帰り」
にこりと笑う女性、この女性がイレーネ先生。
年は40〜50くらいでとても優しい人。


ただ…今日は少し悲しそうだ。


どうしたのだろうか。


ただ、俺はそういう風に話をすることがとてつもなく苦手なので、
何も聞かず部屋に戻った。


*


夕食時。

トイレに行こうと厨房の横を通った。


院長先生と、お手伝いの人が夕食を作りながらこんな話をしていた。

「まさか、こんなことがあるものなの…?
5年前の『あの人』が現れるなんて」


こんな話題でなければ、俺は通り過ぎていたはずだった。


だが、5年前、というフレーズを聞いただけで、あの日を思い出してしまって、
怒りと不安で足がすくむ。


5年前のあの日と、何か関係でも…あるのか?


「でも、『あの人』は確か…死んだはずではなかったですか?」

お手伝いさんの顔も青ざめている。



あの人…それは恐らく敵のリーダーだろう。
俺にはそれくらいしか想像できなかった。


夕食のときも2人は何も言わなかったし、勘違いであることを願った。




そして、普通に寝る支度をすませ、ベットに入った。

ベットの横の小さなテーブルには、あの日に1枚だけ残っていた家族写真。


父と母とそして俺。


すごく…幸せそうだ。



毎日それをみるだけで涙がこぼれそうになるけど、

それはそれで幸せで。


あの日を忘れないことが色々な意味で、俺の生きる糧となっている。

写真におやすみを告げると俺は夢の中へを落ちていった。










次の日。