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Re:   と姫  目指せ! 乙女ゲーム風!← ( No.20 )
日時: 2011/01/13 19:58
名前: 魑魅魍魎 ◆UTmvEGhzaE (ID: OeXJRIuY)
参照: 実はウチ、京都の人どすww←最近京言葉を使う若者はいない

Ⅲ  「狂乱愛亡血姫」



どれだけ小さな国にも、抗えぬ時代の流れはやってくる。
    とうとう、おぞましき戦争がこの国を襲う───。





「では、行ってらっしゃい。どうか気をつけて……」

“気をつけて”と言ったところで命が救われるとは思っていない。
 けれど、こんなことしか言えない自分がもどがしい。


「ああ……。必ず戻ってくる」


戦う兵士にも、戦争は嬉しいものではない。命の保証なんてない。
 荒ぶ戦場に身を投じ、幸せな者はいない。血に塗れて、幸せな者はいない。



俺はきっと、一人の男として、姫を好いていたのだと思う。
 でなければ、死ぬのがこんなにも恐ろしいとは思わない筈だ。


想いが通じても、幸せに生きられるとは思っていない。
 今まで多くの命を奪い続けてきて、幸せになる事はきっとないだろう。

でも、きっとただ伝えるだけで、それでいいのだろうと俺は思う。きっと、未練などない筈だ。


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彼は私を救ってくれた唯一の人。だから、彼には死んでほしくない。
でも、死んでしまうかもしれない。どれだけ強くても、何かあれば人はすぐに死ぬ。



彼はきっと知らない。私も今まで気づかなかった。愛と言う感情は彼に向けられたもの。
でも、伝えたところで幸せになろうなんて思っていない。この汚れた身で、彼の傍にいようなど思わない。


きっと、未練はないの。彼には彼の幸せが在って、私には私に相応し生き様がある。