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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: と姫 目指せ! 乙女ゲーム風!← ( No.44 )
- 日時: 2011/01/16 16:43
- 名前: 魑魅魍魎 ◆UTmvEGhzaE (ID: OeXJRIuY)
Ⅲ「小さくても、喩え消えそうに儚くても、幸せです」
もう、死ぬんだ
今が何時か、何日か、それすら分からない。ただ歩いている。ボロボロになったドレスと靴で歩き続けている。
「───ひ────姫っ───!?」
最後に懐かしい声が聞こえた。それが本当の貴方ならいい。夢幻でなければいい。
「ん……?」
瞳を開ければ、見えるはずのない貴方が居た。これは死後の世界か、それとも生きる世界か───。
「レラー……ジュ?」
確認するように問う。夢幻かも知れないのに、涙を流していた。もう一度逢いたいと願った愛しい存在に。
「仰る通り。レラージュです」
いつもの軽い声。いつものふざけた笑顔。
「……」
夢幻なんかじゃない。本当の貴方。何度恋い焦がれたか知れない、本当の貴方。
「離れてみて解ったの。私、貴方が好きだわ……」
ちゃんと届いたか解らない。涙で掠れて聞こえていなかったかもしれない。
「……僕も」
泣いている私を抱き締める腕は、昔のように力強くないけれど。でも、変わらない貴方の温もりがある。
「痩せたわね」
もう、強くて逞しいレラージュはここにいないのかも知れない。
でも、貴方が貴方のままで居てくれるなら私はそれでいい。
「そっちこそ……」
私を抱き締める細くなってしまった腕は力を増して、決して離さないように抱き締めてくれた。
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