ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒白ノ歴史 -静かに狂想曲は始まる- ( No.15 )
- 日時: 2011/01/20 21:27
- 名前: 花影 ◆wNp4n0Oqx2 (ID: EHM01iHp)
「エーリース!」
ラウディの声が耳に飛び込んだ。ここ数日ずっと聞いている声。しかし、その声に一つの違いがあった。
──いつものような、機械特有の濁りがない。とても澄んでいるきれいな声だ。
「ラウ・・・」
驚きの表情を貼り付けて、エリスはラウディを見る。・・・・彼女はいつから、ラウディのことをラウと呼ぶようになったのだろうか。
「あ、やっと音声機能が直ったんです」
その言葉に彼女は首をかしげた。「直った」ということは、壊れるようなことがあった、と言うことだ。
「壊れてたってこと・・?どうして?」
「えっと・・・」
エリスの疑問にラウディは目線をそらした。ホログラムなので冷や汗が流れることは普通ないのだが、ラウディの額には冷や汗が流れている。
ずいぶんと遊び心があるようだ。
「えっと?」
ラウディのそらした目線の先に回り込んで、彼女は瞳を見つめる。
「あー・・・うぅ・・・」
彼女は小さくうめいた後──
「船で次元移動することは伝えましたよね?」
「うん」
「えと・・・。着地失敗しちゃったんです。 テヘ☆」
ラウディは自分の頭をこつんと小突く。エリスは思いもしない言葉に絶句しているようだ。わなわなと彼女の手は震えている。
「な・・・・・・っなんで・・・」
全身が震える。心なしか、拳や肩に力が入っていた。
「なんで、そう大事なことを言わないのー?!!」
怒りで彼女は爆発した。ホログラムなので触れはしないのだが、彼女はラウディにパンチを繰り出す。
ラウディも避ける必要はさらさら無いのだが、右左と体を揺らして避ける。栗色の髪が太陽の光で反射した。
──ホログラムなので反射はしないはずなのだが。
「はぁ・・・っはぁ・・・・っ」
幾ばかのパンチを繰り返した後、肩で息をしながらエリスは腕を下ろす。
「ごめんなさい・・・」
言ったと同時にエリスに睨まれた。翡翠色の瞳が細くなっている。
「それと!お願いだから敬語やめて」
「はいっ・・・じゃなかった、うんっ」
エリスに凄まれて、ラウディは肩を縮めた。エリスは納得したようで、にこやか笑顔に戻っている。
「エリスー!」
エリスとラウディの背後から、ケインの呼び声が聞こえた。
「クレアがそろそろ準備しろって〜!」
「分かった!今行くよ〜」
エリスはケインのほうへ走り出した。