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Re: 黒白ノ歴史 -静かに狂想曲は始まる- ( No.18 )
日時: 2011/01/24 16:10
名前: 花影 ◆wNp4n0Oqx2 (ID: EHM01iHp)

「「光の軌跡よ 我らに道筋を示せ 混沌にたゆたいし船は光を辿る」」
日差しの暑くなってきた午後、二人の声が森を駆け抜ける。
翡翠と琥珀色の二つの、一般的に魔方陣といわれるものが二人の足元に出現した。
翡翠色の五芒星はエリスを中心に、大きな五芒星の頂点となる位置に広がる。琥珀色の五芒星もケインを中心に、同じような形態になった。
「「船よ 我らの前にその姿を示せ」」
発動のムーブワーズの掛け声と共に、五芒星はいっそう輝きを増す。二人の前に移動した五芒星は、形を崩さず重なり合う。
地面に広がった五芒星の中心が強く光った瞬間、クレアの声が響いた。
言葉に従って、二人は五芒星の中心へ移動する。光が二人を覆い、そして消えた。後には、静かに風に揺れる木々が森の静けさを一層強くしているだけだ。

      ●

赤と金を基調としたホテルのような部屋に二人はいた。
「へ・・・・?」
「わぁ!きっれーい!!」
いまいち状況を飲み込めないケインをよそに、エリスは部屋を駆け回る。年の相応の無邪気な表情だ。
「船の操縦はクレアたちに任せてよかったんだよな?」
エリスが走り回っているのをしばらく見てからケインは聞いた。「はい、それでは・・・」という返事を聞き、ケインは小さく首をかしげる。
「それでは、コクピットルームに行きましょうか。そこに行かないと操縦も何もありませんしね」
クレアの言葉にエリスも走り回るのをやめて、次に何があるのか期待に満ちた顔で扉を見つめている。
「では、ついてきてください」
ラウディが言った直後、エリスが扉を跳ね開けようとしたが──
──全自動式だったので、勢いのまま扉へぶつかる。
「お前なぁ・・・」
「エリスらしいですね」
「同感です・・・」
エリスの後ろ三人は各々呆れた表情を見せていた。そんなものお構いなしに、彼女は早く行くよう催促する。
「はいはい。こっちですよ」
呆れた表情のまま、ラウディは上に続く階段へ向かった。その後ろを、金魚のフンよろしくエリスは続く。
階段を上ると、先ほどの通路や部屋のような色合いの通路が続いていた。その奥に一枚の扉がある。
扉をくぐれば、これまたどっかの宇宙船よろしくな造りの部屋があった。
「おおおぉぉぉ!!」
今度は、エリスではなくケインの瞳が輝いている。
クレアとラウディは中心にある台座をさして言った。
「あそこにイマージェネンスをセットしてくれれば、私たちで制御できますので」
「下の部屋でゆっくりしていてください」
エリスたちは小さく頷いて、言われたとおりにセットした。