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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒白ノ歴史 -静かに狂想曲は始まる- ( No.3 )
- 日時: 2011/01/11 16:45
- 名前: 花影 ◆wNp4n0Oqx2 (ID: EHM01iHp)
少女は空を仰いだ。澄んだ風が心地いい。一時だけ何もかも忘れられる。
「エリスどしたん?」
隣で転がっていた少年が、ふいに言葉を投げかけた。
「ううん。ちょっと風が気持ちいいなって、思って」
エリスは感じた気持ちをそのまま口に出す。そう思ったのは事実だから。
「ケイン・・・」
「どした?」
かすれた声で、自分の名を呼ぶエリスが気にかかりながらも、彼は返事を返した。
「これから、本当にあたしたちだけなんだよね・・・」
その言葉には、悲痛の色が濃く刻まれている。
「あぁ・・」
「そ・・・っか」
「これから・・・」
ケインは一度、言葉を切り──
「・・・どうしよっか」
「どう・・しようね?」
二人の瞳から、涙が零れ落ちた。今まで一緒で、これからも一緒だと思っていた大事な仲間が消えた。必死に逃げてそして気づいたときには──
──気づいたときには二人しかいなかった。
「ホント、どうしよう」
自嘲気味に笑ってはいるが、彼女の翡翠色の瞳から流れ落ちる涙はまだ止まってはいない。
ケインの琥珀色の瞳も涙でぬれている。
「今日はもう寝よう?エリス」
「うん」
ようやく落ち着いた二人は落ち葉の上へ転がった。
風が小鳥のさえずりを運んでくる。樹は子守唄を歌うかのように静かに揺れる。
それから程なくして。彼らは眠りの海へ落ちた。
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