ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒白ノ歴史 -静かに狂想曲は始まる- ( No.4 )
- 日時: 2011/01/11 17:29
- 名前: 花影 ◆wNp4n0Oqx2 (ID: EHM01iHp)
「んっ」
カサリと乾いた音がした。落ち葉が落ちたのだろう。しかし、こんなかすかな音でも目は覚めてしまう。
「夜かぁ」
まだ少し重い体を動かして空を見上げると、幾百にも及ぶ星が木々の間から見える。
夜目に慣れていると、とてつもなく眩しい。本が読めそうだ。
「水を飲みにいこ」
エリスは、ケインを起こさないように立ち上がると、静かに歩き出す。いつもの川のところへ。
川への道は単調なものだった。ただ北へまっすぐ歩いていくだけなのだから。
少し空を見上げているうちに、川へたどり着いた。
手を水の中へ入れると、少し冷やりとして気持ちい。水の中で手を御椀形にすると、水上へ持ち上げた。
唇に水が触れる。そのままごくごくと勢いよく水を飲んだ。
喉が潤っていくのが分かる。水が全身へ染み渡るのが感じ取れた。
「?」
一瞬、気配を感じた。しかし、今はもう、その微かな気配も感じ取れない。
気にせずまた水をすくおうと、川へ手を伸ばす。水は変わらず冷やりとしていた。
「エーリス!」
聞きなれた声が背後から聞こえた。直後に背中へ衝撃が走る。
エリスの瞳に移る景色が一転し、川は盛大な水しぶきを上げた。
「ケイン!」
バシャバシャと水をはねさせて、エリスは水面に浮かんでくる。
「だって、川の前にいたし」
「はぁ?何その理由!」
「こんな理由」
「屁理屈こねるなーっっ!!」
叫んだ彼女は、ケインの足を引っ張る。
「うわっ?!ちょ・・・」
またもや盛大な水しぶきがあがった。先ほどと変わらない大きさの水しぶきだ。
しかし、さっきと違うことが一つあった。ケインがなかなか浮かんでこない。
「ケ・・・インッ?!」
エリスは勢いよく水にもぐった。
この川は、深さは1,5Mほどしかない。が、年端も行かない彼らにとっては十分深かった。
(気ぃ失ったりしてないよね・・・?)
最悪のパターンを考えつつも、かなりのスピードでもぐっていく。ケインを見つけるのにさほど時間は要らなかった。
落ちた辺りから10Mほど離れた地点にケインはいた。内心ほっとしながら、ケインへ近づく。
彼はエリスを見つけると、上を指差した。水上へ行こうとのことだろう。正直言って、もう息が限界だった。エリスより長い時間もぐっていたケインは、さすが男の子といったところか。
「ぷはっ・・・。はぁ、はぁ」
エリスは、胸いっぱいに空気を入れる。隣を見ればケインも同じような状態だ。
「変なもの見つけたんだ」
言うケインの瞳は、真剣そのものだった。