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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒白ノ歴史 -静かに狂想曲は始まる- ( No.7 )
- 日時: 2011/01/13 08:58
- 名前: 花影 ◆wNp4n0Oqx2 (ID: EHM01iHp)
月は水面に映り淡い光で、上方からも下方からも世界を包み込む。小さな手のひらにある「ソレ」も月の光を返していた。
「わっ・・・。きれー・・」
「だろ?」
エリスの小さな呟きに、自慢げにケインは返す。ケインの手のひらにあるソレは、二つのガラスの球体だった。
一つはエリスと同じ翡翠色で、ビー玉サイズだ。首から掛けれるほどの紐が通されている。
もう一つはケインと同じ、琥珀色のビー玉サイズのモノだった。こちらは手首に掛けるほどの長さの紐が通してあった。
「私この色が良いな」
エリスは自分の瞳と同じ色のビー玉を手に取る。その瞳は、きれいなものを見つけた子供特有のキラキラした瞳だった。
二人はビー玉を空に掲げて、月の淡い光を通す。
『『始めまして、マスター』』
二人の持つビー玉に文字が浮かんだ。二人には見たこともない字だ。
驚いているが、それ以上に好奇心が勝っているのだろう。二人は軽く会釈を返す。
『私はラウディ』
翡翠色のビー玉に文字が浮かぶ。文字は読めないが声が聞こえる。
『私はクレアバイル』
こちらも琥珀色のビー玉に文字が浮かび、声が聞こえた。
『『よろしくお願いします』』
「よろしく!」
「よろしくね」
二人は笑って返事をした。
この二人は何も知らずに手に取った。その勇気や信じる心は子供特有だろう。無邪気に微笑みかけている。
そして、時にそれは弱点にも成り得る──────
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