ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ———あなたの恨みをはらします。第一章,完結しました。 ( No.45 )
日時: 2011/01/25 22:50
名前: チロル ◆iPIAnVtKco (ID: S3B.uKn6)

魔女の宴───


Ⅱ.


─────100年前。
まだ、漆黒が幼かった頃の話だ。
その頃の漆黒は、見習い魔女として修行していた頃の話だ。
父は、大分前に死神との戦いで、他界した。


───────

「カボチャよ、大きくなぁれ!」

漆黒は無造作に、杖を振り回す。

────そして。



ボカーン!!!!



爆発したのだった。


「い、痛いよぉ‥‥。」


漆黒は、泣き出してしまう。


「おいおい‥‥漆黒。大丈夫か?」

その人物は、漆黒の頭を撫でるのだった。



「光お兄ちゃん!!」


漆黒は、ライトに抱きつく。
彼は、漆黒の兄。
魔界、始まって以来の天才魔法使いと言われている。


「今日はママの誕生日だぜ?盛大にお祝いしねぇとな!いくぞ、漆黒!!」


光は、漆黒を肩車して家に飛び込む。


「あら、光に漆黒ちゃん。誕生日のご馳走ができたわよ」


彼女は、漆黒らの母親。
現在は人形に変えられてしまっているが‥。


「母さん、祝われる人がご馳走作ってどうすんだよ。」


「あらあら、光が作ってくれるの?」


「俺、料理とか苦手‥‥」


「でしょ?だから作ったのよ」


光が言い終わらないうちに、母親が付け加えた。


「じゃあ、漆黒が作る!」


漆黒は自信満々に言う。


「ありがとう、漆黒ちゃん。今度は漆黒ちゃんに作ってもらおうかしら」


母親は、微笑み漆黒の頭を撫でる。


「くふふ‥‥」


母親に撫でられ、満面の笑みを見せる漆黒。


────ガチャリ。


「ママ、薪持ってきたよ!!」


元気な男の子が勢いよく入ってくる。

彼は、羽黒。
漆黒の双子の弟である。


「ありがとう、羽黒ちゃん」


母親は、羽黒の頭を撫でる。


────暖かい家族の記憶‥。



───────


「漆黒さん‥‥?」


手紙を凝視している、漆黒に李依流は声をかける。


「‥‥なんでもないわ。ちょっと、懐かしいものに浸っていただけ‥。」


漆黒は、どこか淋しそうな表情をしながら、手紙を閉じる。


「中身はなんだったんだ?」


シェーラが聞く。



「お父さまの遺産‥‥。家の庭から出てきたって、弟が‥」



「漆黒さん、ご兄弟が居るんですか?!」


李依流は、意外だという顔をしている。


「まぁね‥‥行方不明の兄と、お母さんを魔法界で守っている、双子の弟がいるわ‥」

漆黒は、新しく入れた紅茶を飲む。


「行方不明‥‥か。」


シェーラは、複雑そうな顔をしている。


「えっ、ええっ‥!?」


状況をわかって居ない李依流は、ただ戸惑ってあたりをキョロキョロしている。


「暗い話をしたわね。」


漆黒は立ち上がる。



「どこいくんだよ、漆黒」


シェーラが呼び止めるが、漆黒は小さな声でつぶやく。


「トイレよ‥‥」


─────パタン。



漆黒はトイレではなく、自室に入った。



────ぽた‥‥ぽた‥。



漆黒の目には、涙が浮かぶ。


「‥‥‥早く取り戻さなくてはね。」


漆黒は黙って窓の外の月を見るのだった