ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ———あなたの恨みをはらします。第一章,完結しました。 ( No.47 )
- 日時: 2011/01/26 17:15
- 名前: チロル (ID: 7foclzLM)
第2章—————彼岸花ノ咲ク交差点。
9話
〜♪
信号が青に変わり,歩行者用しんごうからメロディーが聞こえてくる。
そこにある,無造作に曲がった電柱・・・。
その電柱の下に,花束が置かれている。
毎日・・・毎日・・・。
────1年前。
この交差点で、交通事故があった。
被害者の名前は、神田茜。
当時、中学2年生の女の子。
彼女は、部活の帰りに友人と2人で帰宅していた時に、トラックに跳ねられた。
トラックは避けようとしたが間に合わず、女の子ごと電柱に突っ込んでいった。
今も、その電柱は無造作に折れ曲がっていて、事故の傷痕を物語っている。
────それから、その交差点を横断する中学生が、トラックに跳ねられる事故が多発するようになり、中学生は誰も交差点を横断しない。
その事故の時、電柱の傍に彼岸花が咲いていることから、この交差点は、亡くなった女の子の霊があの世に引きずり込もうとしているなどとの噂が広まっている。
─────夕方。
中学生が帰宅する時間だ。
中学生の集団が交差点へ歩いてくる。
皆、交差点の信号を渡ろうとはしない。
遠回りをしてでも、違う道を通って帰る。
死ぬよりはマシなのだろうか‥。
その誰も中学生が居ない交差点に、中学生が1人歩いてくる。
そして、無造作に曲がる電柱に花束を置いた。
───彼は、神田冬馬。
1年前の交通事故の被害者、神田茜の弟であり、中学2年生。
姉が亡くなってから、毎日‥花を置いている。
「毎日毎日‥‥大変なんですね」
後ろから、声を掛けてきたのは、桜井伶。
冬馬のクラスメイトで、今年、転校してきた子だ。
「なんだ、伶か‥脅かすなよ。」
冬馬は、立ち上がる。
「天国のお姉さんも、喜んでるんじゃないのかな‥?冬馬君、毎日お花あげてるし‥。」
「だといいんだがな‥‥。まだ、この世には、恨みがあると思うけど。」
冬馬と伶は、電柱に手を合わせてから、家路へと向かう。
二人が通り過ぎてからの話だ。
交差点に人影が現れる。
「‥‥‥霊気を感じる。」
その人物は、電柱の周りを調べる。
「‥‥‥やっぱり。久しぶりに、人間界に来た甲斐があった‥‥。」
その人物は、曲がった電柱を撫でる。
「‥この魂‥‥‥成仏してない‥‥。死神の私が言う‥‥間違いない。」
その死神は、ある一点を見つめているのだった。
