ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 堕ちる背徳 ( No.1 )
- 日時: 2011/01/12 17:11
- 名前: 綯草 ◆STPWdde6uc (ID: 2tJjIFjC)
〜狂〜
「ん…っ」
妙な感覚に包まれながら私は目を覚ました。
「ここ…は??」
頭が割れるように痛い。脳内で誰かが悲鳴をあげているようだ。
「………」
周りを見渡すとコンクリートで作られた無機質で生活感のない部屋が広がっていた。
「…え??」
思わず漏らした声は1mほど頭上より高い天井に吸い込まれていった。
窓や扉などは無く、コンクリートの壁と床の上に雑に置かれた白いテーブルとソファ、それから私が今いるベッドしか無い。
「…」
言葉には表しにくい感覚が身体を支配して行く。人間の本能的に感じる感覚なのだろうか?『此処から逃げろ』と誰かが耳元で囁いているようだった。
「…おかしぃ…でしょ。」
無機質な空間からどうにかして出ようとして身体を起こしてベッドからおりるとコンクリートのひんやりとした感覚を受けた。
ベッドの周辺を見ても靴やスリッパなどが無い。…このまま裸足でいろという事だろうか??
「誰…かぁ…いません…かぁ??」
駄目もとで声を出してみる。
『アナタはココかラでタイですカぁ???』
中性的で性別の分からない声が私の脳内に響いた。
「…えっ??」
その不気味な声は通常の゛音"のように外部から聞こえてくる感じでは無かった。自分の体内で…底から聞こえてくるような生理的に受け付けられない声。
『ダァかぁらァっ!!アナタはココからデたいンですカぁ??』
その声は少し苛立ったような声で私にまた聞いて来た。
「ぁ…っ!!出たいに決まってるでしょ!?早く出してよ!!」
体内から響いてくる寒気のする声に私は大声をあげて返事をした。
『ソウ…ですカぁ…。じゃア…これカら行うゲーむをやってクりあしたら…ダしてあげまスよ。』
残念そうに声を少し低くなった声はそう言うと聞こえなくなった。
そのかわりにいつの間にか机の上にさっきまで無かった紙切れが置いてあった。
「…??」
その紙切れを手に持って中身をみるとゴシック体で書かれた文字が目にうつった。
【※今から貴方には真実を話して貰います。
嘘はつかないで下さい。ついた場合、貴方には
この部屋から出る権利を破棄したと見なします。※
それではひとつめの質問
貴方の名前は何ですか??】
意味のわからない質問に戸惑いながらも時間制限なんかがあったら大変なので私は慌てて質問に答えた。
「私の名前…は、湊 悠梨!!」
恐怖からか声が自然と震えてしまう。…怖い。これから何も無ければ良いけど…。
またその紙に目をうつす。
「…え??」
驚愕した。その紙に書いてある文字が変わっていたのだ。
【1問目は真実のようですねそれでは
2問目です。
貴方の卒業した小学校は??】
「…南山小学校。」
【貴方が初めて飼った動物は??】
「犬」
【貴方が好きな食べ物は??】
「オレンジ。」
【貴方と初めて付き合った異性の名前は??】
「高橋雄太君。」
…そんな感じで数十分間もくだらない質問の受け答えを続けた。すると丁度100問目の問題が違う雰囲気の問題だった。
【貴方は人を殺した事がありますか??】
身体が震えた。…私は…人を……殺した事が…あるの??
…その瞬間、脳裏に映像が流れ出した。
…初めて付き合った彼氏…高橋雄太君が私の隣にいる。楽しげに笑っている。
…私は、高橋君を嫌いだった…。そうだ、付き合ったのも…禁止されてたバイトをしているのをバラすと脅されたからだったんだ…。
「……!!」
手のひらに当たる感覚。何か、太い何かを握りしめ、力を注いでいる。握りしめられているのは…
高橋君の首。
グチャァッ!という喉の潰れる感覚。全てが鮮明に蘇った。…そうだ。私は…ッ私は6前…中学3年生の時…当時付き合っていた彼氏…高橋雄太君を殺めたんだ。
「…ッハァ…ッハァ…ハァ…ハァ…ッッ」
息が荒くなる。手にはあの時の感覚が染みついているのかまだあの生温かい高橋君の首が握られているようだった。
【貴方は人を殺した事がありますか??】
私の目に飛び込んできた文字。それは…私の罪を確認するようだった。
「えぇ!!あるわよっ!あの夜…無理矢理私を押し倒して来た高橋君の首を絞めて殺したわよっ!!でも…ッしょうがないじゃない…ッ!!あぁぁああぁぁあぁぁぁあぁあああぁッッッッ!!!」
大声で叫んでいた。声が出なくなると思う位大声で。私は…私の罪は———————……
「警部、湊 悠梨が事件についての容疑を認めました。」
若い男が中年の男に向かって言った。
「…そうか。なかなか口を割らなかったからな…最終手段だよ。…大財閥の高橋家の息子を殺したんだ、時効で逃がす訳にはいかないからね。ハハハハッ」
高笑いする男の声は殺人者の女には決して届かない。
「ダッテショウガナカッタノヨ。」
コンクリートの壁が開き、警察官に手錠をかけられながら女は泣きながらそう言った。