ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- ■序章 —この街の取り扱い説明書— ( No.1 )
- 日時: 2011/01/19 21:53
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: zi/NirI0)
- 参照: お好み焼きは生地と肉が無いのが好きなんだ、アタイ。
「Hello、そしてGoodbye、新しい同胞よ!
ここがどんなところだって? そんなのここで生きてみりゃわかるさ! よし窓を開けてごらんそこには数字と記号の海だ! それは時に非情であり無情である劣情でもあるんだ!
さぁ、愛と勇気を友達にしてこの街へ繰り出すんだ!
……え、この街の名前? 何言ってるんだい、ここは『実験都市(シミュレーションシティ)』さ!」
■序章 —この街の取り扱い説明書—
実験都市(シミュレーションシティ)。
実験都市は、東京の地下深くに存在している。存在している理由は、ただ一つ。何十年か前に、日本の政府が地下深くへと実験都市を埋めたからだ。いや、埋めたという表現は正しくない。正式には、沈めたという表現の方が合っているだろう。
実験都市が何故生まれたのか。そして、何故今地下深くで存在しているのか。
……昔々のことだ。まだ実験都市という名さえついていない、とある事情によって出来てしまった、東京にあった広大な更地。政府はそこに、最先端の技術と科学を用いた世界最大の都市を作ろうとした。それに政府の人間たちはもちろん同意。早速行動に移ろうと、とある天才科学者の男を主任とした。
その男は、紫宵散罪(しよいさんざい)という。後に実験都市の神という異名を持った偉大な科学者であり、またの名を狂いの散罪と呼ばれたマッドサイエンティストだ。
彼は、莫大な金と多くの助手、そして設備を政府から譲り受けた。————それからおよそ5年もの間、彼は実験都市を作り続け、同時に世界最先端の技術を生み出していった。
彼は思っていた。
(俺がこうやって頑張る程、実験都市は発展していく。それはなんて光栄なことなのか。……俺はこの夢と希望を、人々の為に作り、生み出していくぞ。名誉? 地位? そんなのどうでも良い、ただ俺は作りたいんだ!)
彼の満足と実績は、確実に実験都市を繁栄させてゆく。
……しかし、彼の誠実な思いと知能と年月は、政府に恐怖という種を植え付けるのには十分過ぎる材料だった。政府の連中は、魔法のような機械を作っていく彼に、畏怖していたのだ。
(彼はいつか、自分の立っている立場に気付く。そして自分の作っている、兵器に値する機械や思考も。————これらはきっと、いつか政府に反乱を起こす火種になるはずだ。そんなことが起こる前に、彼とあの実験都市を……!)
2つの相対し、決して交わることのない思いは————結果として、『世界の平和を脅かす存在になるかもしれないので、実験都市を沈める』というものになった。紫宵散罪は、政府の恐れによって、自らの信念をぼろぼろに打ち砕かれたのである。
————その時からだ。東京の地下深くで、実験都市(シミュレーションシティ)がまだ生き、残っているという噂が流れ始めたのは。紫宵散罪が『コード』という名の科学的能力を発明したという現実を直視させられたのは。
『コード』。
それは、個人が持てる、科学的能力のことだ。数式や記号で作られている、一種の魔術のような能力。全ては『マザー』という実験都市の中心にある巨大な機械で全て把握されており、その種類は数億万にも達するという。
人々はこれを仕事として扱ったり、自分の得意分野として扱ったり、趣味として扱ったり。————そして、時には戦闘として扱ったりもするのだ。
「これは、そんな舞台の物語、物語」
どこかで小さく、誰かが笑った。