ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■17—舞台B、その半分にて ( No.85 )
日時: 2011/03/29 13:05
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: アクセロリータ「やべェよ! 止まんねェよ!」

 「ごほっ、ごほっ……」

 水が、襲ってくる。それを、倒す。言葉にすれば簡単なのに。なのに、何で立ち向かえないんだろうか。何で、勝てないんだろうか。そんなことばかり考えていた。濡れた髪とセーラー服が、やけに鬱陶しい。目の前で可愛く小首を傾げてる少女のレモン色の瞳の奥底に、ひどく残虐さを感じる。嗚呼、こうやって苦しい思いをさせるのなら、どうかひとおもいに×してくれれば良いのに。
 りー子はごほごほと咳き込みながら、目の前が絶望に染まっていくのを感じた。路地裏に隠れたのは良いものの、ここもすぐ見つかる。二対二なら、一人一人戦った方が楽……なんていい出したのは遊だったか、自分だったか。水でふやけきった脳みそは、正しい記憶なんて呼び覚ましてくれそうにない。

 「と、とにかく遊と連携を————」
 「————えぇー? もうあっちの人にすがるのかなー?」
 「っツ!?」

 ふと路地の入り口を見れば、金髪の少女が笑みの色を濃くしていて。

 「さぁ、追いかけっこの続きだよう?」

 嗚呼どうかひとおもいに、と思うのは罪なのだろうか。



 ■17—舞台B、その半分にて



 時はおよそ三十分前に遡る。
 それぞれに、來榧奏蘿(くるがやかなら)と名乗った少女と高峯翔(たかみねしょう)という少年は、りー子と遊が何かを聞く暇もなくコードの攻撃を始めた。りー子はあまり見ていないので分からないが、高峯という方のコードは物質を変える能力らしい。「ほらよッ!」と突然、手に持っていたフォークを投げてきたと思えば、避けた時にはフォークは銀色のナイフへと変わっていたからだ。対して來榧という少女は、高峯の攻撃に便乗するでもなく、

 「翔さーん、何で初めから戦闘モードなの? 何で? アドレナリンばりばり?」
 「馬ッ鹿野郎が。俺は喧嘩をする時は自分から仕掛ける派だ、そうすれば相手にナメられずに済むんだよガキが」
 「つ、つまり翔さんは気が短いってことなのかなー?」

 高峯の攻撃の意図について疑問を抱いているだけだった。……勿論、初めは。その後、高峯は近くの金属の手すりに触れ、それをチェンソー程の大きさのナイフに変化させて、遊に斬りかかったのだ。どうやら高峯は遊と一対一で戦いたかったようだ。高峯VS遊、來榧VSりー子という流れになった。また來榧の方は少女とはいえど戦闘を好む性格らしく、満面の笑みでりー子に氷のステッキを振り回してきた。二人の攻撃が交わされる度に近くの店は半壊し砂煙や崩壊がひどく、近寄ることも許されなかった。その他にも多くの理由で遊とりー子はろくに話もせずに引き離され、お互いの戦いに没頭する————そして、現状に至る。

 (それをっ、今っ、後悔してるんっスけど、ねっ)

 鉛をつけたように重い足取りで、りー子は胴体を狙った氷の槍を避けた。しかし学ランまでは避けきれず、胴体辺りに空洞が出来てしまった。要は穴が開いたのだ。普段のりー子にとっては大事な学ランが大変っス!、と重大なことだが、今は気に留める状況ではない。

 「そーれっ、え、えいやっ!」
 「がふぁ……っ……く、るがら……」

 細い路地裏で、來榧の白いブラウスに包まれた両腕が帆のようになびく。ゆらり、ゆらりと揺れる度に汚れた水道から流れる多量の水が、りー子の顔を打ち付ける。意思を持ったかのようなその動きは、幼い少女の殺意をそのまま表現したかのよう。だが殺す気はないのか、戦闘を始めた時からずっとこの調子で、りー子の表情を苦痛に歪めるのみで、一向に息の根を止めようとはしない。殺されない意味も分からず、りー子は逃げ惑いながら気管に入った水を辛そうに吐く。

 「っははー、素敵な顔なんだけどなぁー、何でみんなこの顔が嫌いなんだろう? 氷砕さんにしろ、天城さんにしろ。私は好きなのになぁー……翔さんは知らないけどね」

 一通りりー子を苦しめた後で、來榧は不思議そうにりー子の顔を無理矢理上げさせた。少女のコードの能力によって、水で出来た巨大な手がりー子のセミロングの髪を掴み持ち上げる。毛根と共に脳みそまで引き千切れそうな痛みに、りー子は顔をしかめた。プールで溺れた時のような不快感が鼻を伝う。

 「…………ごほ、なンのことっスか……×すならさっさと×せば良いっていうのに……こ、ッんな風に追いかけて、人の呼吸を水でと、止めて、苦しみだけ味あ、わせて」

 酸素を胸に溜めて、りー子はノイズがかった言葉を紡ぐ。×すという単語は、小さい頃から中途半端だと周囲に見下されてきたりー子にとっては身近な言葉であり、自身に行おうとしてきた言葉。ある意味、昔のトラウマなのでタブーの言葉だ。その言葉を平然と口に出す辺り、相当彼女の精神は追い詰められている。遊が今の自分の状況を見たら、驚くかもしれない。りー子は自虐的に笑んで思った。


 「あ、それはだめなんだよ? まだまだ、×すのは後からだってば!」


 否定、された。幼稚園の先生が幼児にもう遊んではいけないよと優しく注意する程の、優しさを孕んだ声色。その言葉はりー子の内面を深く抉った。

 「あぁ勘違いしないでよ? 私は人をいたぶるのが趣味なんだってば。えへへっ! だからさ、すぐにぱーっと潰しちゃっても面白くないのっ。ホントだったら、近くによって貴方の体内の水分を全部一気に外の世界へ大放出! なーんてのしても良いんだけどねー? でもホラやっぱ、それって面白くないでしょ?」

 怒りでは無い、恐怖や混乱が胃の底からこみ上げてくるのを感じる。ぴしゃり、と水の尾がアスファルトの地面をぴしゃりと叩く。その飛沫は頬にちり、微かに温度を奪われた。來榧の言葉が、脳内で処理できないままじくじくとした痛みを放つ。アレ? もしかして、自分はこれから何分も何時間もこんな鬼ごっこをするんだろうか? もしかして、この少女はこれ以上に自分を傷つける方法を考えているんだろうか? あぁ、もしそうならば、そうならば。


 「……て、よ」


 ————自分は一体、どれ程の苦しみを負えば良いんだ?


 「もう、×してよ」


 震える足を動かして、少女は逃げた。
 中途半端に逃げることの出来ない自分と、目の前の倒すべき相手から。


■17—舞台B、その半分にて ( No.86 )
日時: 2011/03/29 13:07
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: アクセロリータ「やべェよ! 止まんねェよ!」




 *



 「あーあー。逃げられちゃったなぁ」

 残念そうに、愉快そうに足元の水を見て呟く姿は年相応の少女に見える。來榧はスカートを濡らさないように、ローファーを履いた足元で器用に路地裏を出て行く。通りに出ると、濡れた何かを引き摺った後が遠い道の先まで点々とシミになっている。さっきまで追い詰めていたりー子という少女のものだ。ついつい、口元が吊りあがる。

 (……でも、少し妙なんだよねー……何でだろ?)

 だが、その笑いもすぐに疑問が含まれた。むぅと唇を尖らせて、手の平に残ったさっきの水の感触を思い出しつつ、手のひらを拳にしたり開いたりする。

 (さっき、あのりー子って人が逃げ出す直前に、私は思い切りお腹を狙って水のドリルを放出させたはずなのに。でもあの人は普通に逃げられた。決して避けられたり対抗できたりだとか、そういう攻撃じゃなかったのに。なのに、何で?)

 みゅーっと眉を八の字にしていた來榧だったが、やがて自分のコードの能力を確かめるように水の塊をくねらせてみると、りー子が逃げていったであろう方向へと歩みだした。三つ編みにされた金髪が、來榧の動きと共に上下する。

 (何にしろ、私の攻撃は水分を自由に操ること。よほどのことが無い限り、私に欠点はない。……だから、安心して、)

 いたぶれば良い、と來榧は小さくほくそ笑んだ。年齢に似合わぬ、大人びた表情のままに。
 やがて彼女は、その先に獲物を見据えて歩みを進める。

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【17更新】 ( No.87 )
日時: 2011/03/29 23:14
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: アクセロリータ「やべェよ! 止まんねェよ!」

どうしようかと悩み中ですがどうしよう

りー子編一気に終わらせるか、はたまた遊VS高峯君でいって、大好きな天城先輩vs撲滅運動対象物にすべきか。流れを変えるか変えないかどっちか。結局は自分で決めることになるのですが。
あー番外編書きたいよ承太郎たん
気が抜けるものを書きたいよ

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【17更新】 ( No.88 )
日時: 2011/03/30 04:26
名前: 神埼虚空 ◆vcRbhehpKE (ID: L7bcLqD7)
参照: >>2 ただの野菜炒めじゃねえかッ!

まだ全部読み終えてないけどコメントしちゃうんだぜ!元紅蓮の流星なんだぜ!
…という訳でなんかあんまり面白かったもので全裸の男のくだりまで読んだところでコメントという暴挙に走りました。
これからも更新頑張ってください、応援しています。

Re: ウィンドウズ・フ ( No.89 )
日時: 2011/03/30 08:16
名前: 豆腐屋 ◆yZ371Yzn82 (ID: EbMOb6mj)

わあ、更新されtひでぶ
天からの裁きでしょうか鉄槌でしょうか、豆腐屋です
なんだかふっきれて?素手で挑みだした日吉さん。氷のグローブみたいなの作られて殴られたらひとたまりもないだろうが、コードを無力化するコード持ちでしたっけ?あれ、これなんて幻想kry
そして解明さんイケメンすぎる。と思ったら緑崎さん狂気やでぇ……
あれか、空間の防御壁ごとめぎょっと空間で裂かれるみたいな防御できない防戦一方みたいな流れに なりませんよねー、根本が同じ力同士なら主導権握った者勝ちとなるのでしょうか
奏羅……恐ろしい子!って流れ。「犯されろ」よりも危ないよこの子!りー子のトラウマまできっちりと呼び覚ましてくれる親切設計否、心折設計。
しかし何故にマザーを狙うのやら。統率なんてのはきっと建て前だ、そうに違いない。悪の組織には建て前と本性は合致しないというお約束が!ありませんねそんなの
ではこの辺りで。更新をゆっくりと待たせていただきますね。

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【17更新】 ( No.90 )
日時: 2011/03/30 16:58
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: アクセロリータ「やべェよ! 止まんねェよ!」

>>88
■神崎虚空様
 一皮剥けた紅蓮の流星様ってことですねわかります。……いや、一皮剥けたってそういう変な意味じゃないですよ、ただ私は木原君的なサムシングをですね……いいや何かもう……(遠い目)
 全裸の男もとい撲滅キャンペーン対象物のカピバラですね。いえいえ、読んでくださるだけで嬉しさの極みだというのに、さらにコメントとなればもう興奮するしかありませんよ。コメント有難う御座います。
 そのコメントを胸に、のろのろ更新ですが精進していきます。

 コメント有難う御座いました(`・ω・´)



>>89
■豆腐屋様
 誰だ豆腐屋様をひでぶしたのhそげぶ。……どこぞの上条さんがいた気がしましたが……こちらこそどうもささめです。
 素手で挑みだしましたね、ホント色々考えて欲しいものです。まぁ素手で戦わせる気は毛頭ありませんが( きっとアレです、触角とかで戦え————ないか、うん。コードを無力化というより○○するコードというか。そもそもコードを取得できていなかったりそうじゃなかったり。某幻想殺しのあの人にしか見えなくなってきたという悪夢。
 とりあえず、緑崎さんと解明さんの能力は書いてる本人がよく分からないんですよね……今回緑崎さんボコられたのは、まさか解明の守る能力が攻撃できるなんて知らなかったってことで不意打ちになった結果です。よく分からないよママ。
 どS幼女の奏羅ちゃんは完全私の趣味でりー子のトラウマ呼び覚ましていただきました。ちょっと誇らしい感じです。
 マザー狙ってるのはアレです……ご、ご都合主義……?(テメコラ
 悪の人間ってのはでかいとこ狙いたくなるんですよ! うんもうそれで良いや、そうしとこう! おじいちゃんもう悪い子のこと考えてられない!←
 いえいえ、亀更新ですが頑張っていきますー

コメント有難う御座いました(`・ω・´)

参照700突破だとォ? 無駄無駄ァ!! ( No.91 )
日時: 2011/04/08 22:18
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: アクセロリータ「やべェよ! (文章の長さ的な意味で)止まんねェよ!」

■どうやら参照700突破 — 4月8日金曜日にて
 まさかね、更新してない間に700行くとか思ってなかったんですよ。
 てかね、『いい加減ささめの文章読むの疲れたわー……よし、他の人のとこに行くわ俺。おっすオラ悟空、他の人の小説わくわくすっぞ』ってなってるとか想像してたんですよ。そこでまさかの700の奇襲。何それ嬉しい。
 ———というわけでいつも閲覧頂いてるお方も、ささめに初めてをプレゼントしてくださったお方も有難う御座います。ちなみに初めて、は初めて読んでくださった方という意味です。あぁ、日本語って難しい。
 基本コメント無いとぐだぐだだらだら亀更新、コメント来てもコメント返すのが大好きで本編は進まないという体たらくなささめですが、これからもゆっくり楽しんでいってね!!
 ……さすがに軽いですね。もっと大切に言葉を選んで、他の方のように丁寧な謝辞を述べられたら良いのですが。いかんせんささめは真面目な話をすると真面目すぎて自分でひくので。
 兎にも角にも、まだまだ話は続きます。
 主人公じゃなくなってきた日吉君VS読者のハートはお前が盗んでいる氷砕君。男らしいで有名な解明VSミスター鬼畜緑崎。コイツは俺の嫁りー子VSいやん幼女なのにどSとか萌えるわね來榧ちゃん。だぼだぼジャージですねわかります遊VS木原くんって言わしたい高峯くん。消えれカピバラVS女の子って設定でもありだよな!!天城……くん?
 のろのろとした更新ですが、次は参照800までお付き合いください。ささめはコメント大好きなんで、たまに書き込んでくだされば嬉しいです。
 それでは。次は参照800突破を望んで。



 ささめ

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【参照700謝辞】 ( No.92 )
日時: 2011/04/09 23:02
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: アクセロリータ「やべェよ! (文章の長さ的な意味で)止まんねェよ!」

アクセス禁止だってさ!
涙がふえるね! やったねたえちゃん!

という訳で雑談掲示板がアク禁になりました。いえ決していつものように卑猥かつえっちぃことを書き込んでいたわけではないということを理解していただきたい(真顔)。
いやラノベのスレで入間さんの某本のタイトル入れたら引っかかったよあぼーんって訳です何それ虚しい。
てか久しぶりにアク禁になったわ!! 久しぶりに管理人様のスレに訪問しましたよ! ちなみに管理人様のスレって良いよな、だって何か清純そうな雰囲気だし。きっと爽やか系お嬢様美女とみた。

まぁ簡単に言うとしばらく雑談にはいませんよってことです。
……いや、すぐ戻るかもしれないけどね

■18—舞台B、ゲーマーと不良 ( No.93 )
日時: 2011/04/10 10:37
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: アクセロリータ「やべェよ! (文章の長さ的な意味で)止まんねェよ!」

 喉を抉るように突き出された拳は、微風を起こして空気を殴った。かと思えばすぐに姿勢を低くし、がら空きのボディを狙う。明らかに素人とは考えられない戦い方に、遊は大きく舌打ちをした。深い隈を伴う瞳が、ぎゅぎゅっと吊り上げられる。敵意むき出しの表情に対し、高峯は遊との攻防そのものを楽しんでいるように、愉悦を露わにしていた。

 「お前さァ、俺の能力わかってんのかよ? そんなに逃げてもなァ————」
 「……………………お前の能力は、一つ」
 「ハァ?」

 と、遊はきゅっと路地沿いにある古いホテルに向いた。ガラスの窓を手刀で割り、薄暗いホテルの一室に遊は飛び込む。高峯は常識外れの遊の行動にぴくりとも驚かずに、蹴りを繰り出してビルの奥へ奥へと遊を追い込んでいく。部屋には誰もいなかった。というよりほぼ空き部屋に近い状態で、机の上にある汚れたカップから、人がいたということがかろうじてわかる程度。

 「……………………物質の変化。さっきからナイフをクリボー並みに大量生産してる理由は、それしか考えられない」
 「? ……あ、あぁ、正解だ」
 「……………………嬉しくねー」



 ■18—舞台B、ゲーマーと不良



 高峯の蹴りが、部屋を出たつきあたりにあった廊下の窓ガラスを割った。そこから2人は、互いに攻撃をし続けながらホテルの一室から出る。むすっとした顔の遊とどこか焦った様子の高峯は、いっさい相手の攻撃に驚くことも焦ることもしない。これは単純に戦闘に慣れているからだろう。

 (実は俺も俺自身の『コード』について把握してねェとかいえねェな……)

 高峯は近くの標識を掴むと、脳内で『コード』の数式を構築し変化させて、先を尖らせた。汚れているのも構わずに、殺傷力が増した標識を大きく振りかぶり————その重さによってがくんと膝を落とした。

 「うお、重っ——」
 「……………………隙あり」
 「っちょ、おまッ!?」

 低い位置になった高峯の顔面を、遊の容赦ない蹴りが襲う。初めてそこで、間一髪という風に高峯は避けた。遊はだぼだぼのジャージ(上)の袖を邪魔そうに振るうと、ぐっと後ろに引き————強烈な拳を高峯の崩された膝に叩き込む!

 「! 危ねェッ」

 高峯は生まれ持っての悪運のせいかそれさえもかわす。
 しかし、自分の体が持つ力と遊の蹴りをかわした力が吊り合わなかったらしく、その場に尻餅をついた。目つきの悪い茶色の瞳に、焦燥の色が映える。ぐっと喉から恐怖が這い出てくる。

 「……………………」

 
 いずれ来る相手の攻撃に対して、高峯は視界を強制シャットダウンさせた。額に冷や汗が浮かぶ。目の前が暗闇に包まれているせいか、少しだけ恐怖が緩和される気がしないでもない。高峯の背筋にぞわりとしたものが走った。
 

 (やべェ、やられる!?)

 
  
 *



 (俺は、負けたのか?)
 
 目を閉じているせいで、高峯の見えている世界は真っ暗だった。だが視界を意識から外したからといっても恐怖感だけは残っていて、遊に告げられた後も数秒間、目を開けられずにいた。

 (……あんな、いかにもゲームし過ぎで不健康みてェな女に……俺は、自分のミスで負けたのか?)

 普段の戦闘————まぁそれも不良同士の、いたって平凡な戦いであり、今のような『マザー』をも巻き込むものではないのだが————では、有り得ないような自分のミス(尻餅)。さらに、自身が引き起こしたミスによって負けようとしている現状。初めて味わう敗北感と恐怖を噛み締めて、高峯は完全に自分の世界へと入ってしまっていた。

 「……………………目、開けろっつーの」
 「は? って——ちょぶッ!」
 
 それも、遊のチョップによって『開く』という選択肢を選ぶしかなくなったのだが。

 「ッてェな畜生、何だよ!」
 「……………………うるさい、鼓膜に響く」

 高峯は額を押さえ怒りながら目を開けた。目の端には薄っすらと光る涙。よほど遊のチョップが効いたらしい。
 が、その怒りも眼前の現実によって何処かへ吹っ飛んだ。
 何故なら。


 (……って、何でこいつこんなに顔近ェんだよッッ!?)


 ————遊の顔が、お互いの吐息がかかる程の距離にあったからだ。
 さっきまで絶望と怒りが入り混じっていた高峯の顔に朱色が射す。尖った犬歯が見える口は、ぱくぱくと空気を食む。いくら不良といえども中身は純情少年。女子との付き合いはいつも友達止まり、それに加味して少しばかり端整な顔立ちの遊が真正面にいるとなれば、ある意味赤面せざるを得ないわけだが。
 対して遊はといえば不可解な表情でじっと高峯の前に座り込んでいた。高峯が何故無言になったのか理解できていないようで、若干の苛立ちが見え隠れしている。

 「ってテメェさっさと離れろク.ソが!」

 と、ようやく遊の急接近に(少し)慣れた高峯がたいして力の篭っていないパンチを遊へと繰り出した。だが所詮は尻餅をついたまま、未だ赤面中の不良が繰り出したパンチ。へろへろとした拳は、無表情の遊にすぐに止められる。

 「てめ、止めやがったなッ!?」
 「……………………話を聴けっつーの、この不良もどき」
 「もどきィ!? 何だそりゃ、がんもどきかオイ!」
 「……………………だから、話を静かに聴け」

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【参照700謝辞】 ( No.94 )
日時: 2011/04/10 10:53
名前: ソロモン (ID: cx1920xY)

どもども!ご無沙汰してますひふみんですww

読みましたwwクリボー並に大量生産ってフレーズがめっちゃはまりましたwww
てかおもしろいっすwでは更新頑張ってくださいw

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【参照700謝辞】 ( No.95 )
日時: 2011/04/10 15:42
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: アクセロリータ「やべェよ! (文章の長さ的な意味で)止まんねェよ!」

>>94
■ソロモン様
 こちらこそどうも、ささめで御座います。改名なされたのですね!

 うぉう、読んでくださり有難う御座います! クリボー並みに大量生産ってフレーズは、クリボーの哀れな雑魚キャラ運命に立ち向かおうとするささめの意志です。嘘です。単純に思いつきです。
 面白いの一言が聞けて何よりです(´∀`*) 更新速度は遅いですが、これからも精進していきます。

 コメント有難う御座いました(`・ω・´)

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【参照700謝辞】 ( No.96 )
日時: 2011/04/10 16:29
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: 意外ッ!! それはアク禁ッ!

ところでこの小説を小説図書館に登録しましたー
ぱふぱふードラゴンボール的なアレじゃないからねぱふぱふー

とりあえず小説図書館から来た方はごめんなさい。
 カ ピ バ ラ そ ん な に 出 て ね え わ 。
 全 裸 の 男 そ ん な に 出 て ね え わ 。

良いんだよ、連れ込んだら後は何とでもなる……よな?(
だって阿部さんだって連れ込んだら好き放題してるじゃなイカアッー!


はい、それだけです。
兄ちゃんの足臭すぎてなきそうなささめでした。ほのかな酢のかほり。

■18—舞台B、ゲーマーと不良 ( No.97 )
日時: 2011/04/16 14:08
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: 意外ッ!! それはアク禁ッ!

「……………………そう、取引。別に自分はお前みたいな奴を潰そうと思えば潰せるから、取引じゃなく脅迫みてーな形になるけどね」
「はッ、俺がそんな言葉に乗るとでも————」
「……………………いや、乗る」
「あァん? 俺が乗る? 何でだオイ」

 周囲の空気が一層冷たさを孕み、座り込んでいる2人の間の雰囲気に真剣みを帯びさせた。
 高峯の疑問に答えるために、乗ると断言した遊は更に言葉を続ける。

「……………………まず疑問。お前は何故こんな、『マザー』から離れた場所で自分とりー子を足止めしてる?」
「いや、知らねェっつーの。緑崎が勝手に割り当てたんだろーが」
「……………………違う、その割り当てに深い意味があるってことに気付け三流」
「何だとゴルァ!」
「……………………うるさい、とにかく自分の話を静かに聴いてろ」

 本当に分からない。何故こいつは突然、俺を始末せずに取引なんて持ち出すのだろうか——————高峯は分からないという言葉を飲み込み、遊に話の続きを促した。遊の表情は殆ど無、あえて言うならば不快に近い。

「……………………お前がもしもその力を認められ、主要メンバーなら。お前は必ず『マザー』を襲う一人として今『マザー』内でその力を揮っているはずだろう?」
「っ!! だ、だけどな、俺には緑崎さんからの信頼が————」
「……………………そこが甘い」
 
 それはセーブポイントを確認せずにホラーゲームに挑むぐらい甘い、と遊はよく分かるようで分からないたとえで高峯の反論を一刀両断した。ぐっと高峯がまた気まずい顔で息を呑むが、遊はそんなこと気にしてはいない。ざくざくと自分の理論を築き上げていく。

「……………………もしも信頼があるなら、お前は緑崎(という何故か知ろうともしていなかったリーダーの名前)の右腕として、『マザー』の内部で緑崎と共に戦っているんじゃねーのか」
「た、確かにそれは……」
「……………………だけど違うだろう? お前は今『マザー』から結構離れた場所、学園都市直属学園、聖シミュレーション学園の芝生で尻餅をついている」

 そこまで言うと、高峯は算数の問題の答えがわかった子供のような、真実の光で輝く眼を遊へと向けた。

「ハッ、確かにそうだ! くそっ、俺ははめられてたのかッ!?」
「……………………つまり、お前は信用も信頼も力もないという三拍子で評価された挙句、今このくだらない抗争に巻き込まれているということ」

 遊の言葉により、ようやく高峯は周囲の景色を見渡して自分の座り込んでいる場所を把握しする。
 そう、現在2人が会話を行っているこの場所は最残日吉が通っている学園都市直属学園、聖シミュレーション学園の敷地内にある芝生だった。青々とした草が地面についた高峯に押され、体を屈ませている。涼しいというよりも肌寒いような風は、どこからか騒がしい喧騒の一片を連れてきているようだ。微かに遠くの方から何かが割れるような、砕けるような音がする。

「……………………で、お前はどうする?」
「どうする、ッつって?」
「……………………このままその緑崎という奴に良い様に使われて、処分されるか。それともカピバ——では無く、私の師匠と同じ志である『マザー』の死守をこっそり手伝うか」
「あァ、それならもう答えは決まってるッつーの」

 すくりと高峯が腰を上げた。目つきの悪い瞳が、自身の決意を物語っている。同じ志を持つ者だというのに手も貸さずに、遊は依然低いテンションのまま問う。

「……………………まず、お前の名前は」
「高峯——高峯翔だ」
「……………………自分の名前は、遊」
「あそび、ねェ? チッ、面倒だけどこの抗争が終わるまではテメェを手伝ってやるよ。……面倒だけどな」

 面倒を強調しながら、高峯は視線を空へとそらした。
 

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【参照700謝辞】 ( No.98 )
日時: 2011/04/11 22:51
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: 意外ッ!! それはアク禁ッ!

雑談掲示板行きたいお(´・ω・`)
でもアク禁だお(´・ω・`)
だけど副管理人様がスレにいらしてたお(´・ω・`)

なぁ……俺はいつになったらこの牢獄から出られるんだ……(藤原ボイス)……

ははは水曜日とかだったら泣くよだって塾の日ですもん
うははどうしよう最悪の展開を想像してぽぽぽぽーん
ごめんねシリアスダークで真面目に執筆している皆様、ささめは雑談で話が出来ない腹いせに自分のスレでうっきっきしようとしていますご了承くださいませ

天城君vs撲滅ryが、あまりにも天城君噛ませ犬みたいになりそうで何か嫌だ……天城君は長く使わせていただきたいのに……
それに新しい小説のネタが定まっているようで定まっていない……音的も色々したいし……行き詰ったぜ……

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【参照700謝辞】 ( No.99 )
日時: 2011/04/16 18:20
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: 意外ッ!! それはアク禁ッ!

ほんとにアク禁が解けない……(´・ω・`)
いや自分が悪いのは分かってるんだよ禁止ワード入れたからたぶん(´・ω・`)
今日で一週間でございます(´・ω・`)

ところで天城君の能力がつかめない件について
いや、わかんねぇなら捏造するんだなアヒャヒャって感じですけど、空気・固体でヤフー先生にきいても「だが断る」って鬼畜意見しかくれんってわけです大佐
周囲の物体の温度を変えずに、だから空気自体の温度は変えてもおkな気がするんですけどーでも空気が固体になるって現実ではありえないっぽい感じなんで、うまくイメージがつかめないーとぅるるるるるるーとぅるるるるるードッピオ黙れ

てか新しい小説のネタが定まらないのと、この小説の本編のラストにたどり着く道のりが長すぎて吹いた。2年前ぐらいに書いてた引きこもりの話付け足そうか。てかこの小説と音符なんたらをちゃんと終わらせなくては。
うぐぐ

うぉあ塾ですぜ

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【18更新】 ( No.100 )
日時: 2011/04/16 22:00
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: MlJjY9/z)

うをうw
天城君の能力に困ってらっしゃいましたか……
水の温度が変わらないまま氷、水、水蒸気になるイメージなのです
それの空気バージョンなので、この三つをそのまま置き換えると
氷、水、水蒸気は
固体、液体、気体
なのです
故に、液体の空気で水のようにおぼれて、固体の空気で氷付けになって窒息死するのです
まあ、そんな考えは誰もしないで固体で壁作ったり、拳そのまま空気で氷漬けにして空いて殴るとかその程度が主流っぽいですけども


コメント欄の下にカピバラのぬいぐるみの広告が出てたw
250円だそうでwww

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【18更新】 ( No.101 )
日時: 2011/04/16 23:00
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: 意外ッ!! それはアク禁ッ!

>>100
■Neon様
 おぉうコメント有難う御座いますーというか頭あぼーん的発言に丁寧な返信有難う御座います……! いや、本気でどうしようか悩んでいたので生みの親御様からコメント頂けてありがたいですw
 窒息の辺りは考えていたんですけど、そこから攻撃のバリエーションというか展開がどうもあやふやでして。どうやってもカピバラが生きている気がしててもうカピバラが夢にまで出てくる始末。おっきいいいいいかぴばらおっきいよおおおおおお。

 250円wwww
 まさかの広告てめえwwwwwってなりましたwwwww
 やばいぞこれはツボに来たwwwwwテメェカピバラwwwカキコを制圧して何が楽しいてめぇこらwwwww

 ……取り乱して失礼しまwwwしwwwたwwww
 何かほんと残念な返信ですみません。でも本当に有難う御座いました。続けて執筆頑張ります。天城先輩頑張ろう、いやささめが頑張らなきゃ駄目だろげふん

 コメント有難う御座いました(`・ω・´)
 

参照800突破!ってミサカはミサカは ( No.102 )
日時: 2011/04/17 16:25
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: 意外ッ!! それはアク禁ッ!

■どうやら参照800突破 — 4月17日日曜日にて
 何か、更新速度ほんと遅くてすみませんとしか言えない状況で参照800突破です。書く時間はあるんですが、どうも気力と指がついてこないというこの体たらく。てか雑談のアク禁のせいでどうも上手くエネルギーが放出出来なくて、小説と雑談のバランスがとれません。何そのバランス。
 いや、それでもちょくちょく閲覧してくださる方ほんと有難う御座います。コメントくださる方も同様に、有難う御座います。鬱陶しいほど言いますけど、ささめほんと誰かに見てもらえるのとかコメントとか嬉しいタイプなんで。てか誰かいないと基本(´・ω・`)ってなってますええ。寂しがりというか依存症というか。どっちでもないただの変態というか。
 拙い文章ですが、是非これからもお付き合いお願いします。新しいネタの方や音符的ばっかりに気を取られて最近全く更新できていないのですが。でも天城先輩にかけてる愛とカピバラへの憎しみは本物です! 嘘じゃないお! ほんとほんと!
 ……という訳で、最近現実でも「変態だけど変人」「面白い変な人」という愛称(蔑称だというツッコミはなしで)で呼ばれ始めたささめはこれからもラストに向けて頑張っていきます。
 閲覧してくださる皆様の目の保養に少しでもなれるように、これからも精進していきます。次は参照900突破。ひとりでできるもんなんていえない数字だわコレ……。
 それでは。次は参照900突破を望んで。



 ささめ

■お知らせ ( No.103 )
日時: 2011/04/29 18:31
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: 子・作・りしまURYYYYYYYYYYYYYYYYY

 どうもお久しぶりです、最近服を脱いでいても丁度よい温かさですねなささめです。さっそく最低な挨拶きましたね。自分で自分に絶望した!
 
 いやですね、最近ろくに更新出来ていないわけですが。理由は主に書く時間……はあるんですけど親が厳し……くもないんですけど勉強をして……はいないんですけどおかしいな理由が見つからないっていう何それひどい。
 簡単にいうと『文章が長すぎて一話一話の区切りがつけられないので、音符的スタッカート!のようなこまごまとした形として更新していく』ということです。常に3000字オーバーって無駄なこと書きすぎだよ俺、みたいな。ギャグシーンもシリアスシーンも両方書きたいそれがささめです。

 …………あ、それだけです、はい。
 というわけでこれからものろのろ更新しますよふへへへへ、ささめでしたっと。

 ■19—現実を直視する青年のラングエッジ。 ( No.104 )
日時: 2011/04/29 18:38
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: 子・作・りしまURYYYYYYYYYYYYYYYYY

 天城の先制攻撃は、カピバラをミンチにするには十分過ぎる威力だった。なぜなら天城は敵へ向ける情けなどという感情は持っていないからだ。それは他にも恋慕であり同情であり。……さすがに全く、という訳でもないだろうが、現実主義者で綺麗ごとが大嫌いな天城に友情だの愛だのといった人間味溢れる精神があるのかは不明である。
 彼の性格上、敵つまりカピバラへの攻撃は一切手加減を加えていないもの。全力を出したわけではないとしても、明らかにカピバラが痛手を負うような攻撃をしたのだ。だから、自然と天城の脳内にはカピバラが肉片となった姿が浮かんでいた。



 ■19—現実を直視する青年のラングエッジ。



「捨て台詞、だって? ……ほんと、動物のほざくことなんて現実味のないことばかりだよ。そもそもボクにとって、ボク以外の人間の存在や言葉なんてただの価値観の押し付けにしかならないんだけど……」

 空気という透明の世界の中に、さらに無色で象られた立方体が浮かんでいる——無数の立方体はまるで自分達の存在を誇示するかのように鈍く光っている。立方体はほのかに白い煙を纏い、さらにそれが無数にあるためか、部屋全体が白く霞んでいる。

「というか、ボクにとって君みたいな考えを持つ生き物は吐き気がするんだ。正義——それは自分の欲望を具現化したものかい? 守る——誰かを犠牲にして得られる自己満足のことかい? どれも違うだろう。君達の言ってることは、現実を見てはいないんだよ」

 黒いコートの内側には武器を隠しているのか、微かな風では揺れもしない。天城の銀色のロングヘアーをさっとかきあげて、口角を吊り上げた。表情には皮肉の二文字が窺える。

「……ねえ、聞いているかい?」
「聴いとるぞ」
「ッ!?」

 間髪いれずに、天城の耳に男性の低い声が届いた。思わず戦闘態勢をとる天城。厳しい顔つきになった天城は白く霞んだ部屋の向こう——カピバラが座っていたテーブルがあった場所を睨んだ。もうもうと立ち込める白煙は薄い冷たさを孕み、背筋をぞくりとさせる。
 ————と、次の瞬間。

「残念じゃったのう、天城西院」

 まず初めに——ぬとり、という粘着音が書斎内に響いた。
 白いもやで視界を邪魔されているせいか、何がそのような音をたてているのかは分からない。とにかくぬとりという——何か柔らかく変形しやすいものを床に滑らせたような、妙な音がしたのだ。

(何だ……この音。ゼラチン質みたいな、妙に質感がある音だ……例えていうなら、スライムを床に落としたような……)

 やがて立ち込めていた冷気がじょじょに失せ、奇妙な音の正体を少しずつ明かしてゆく。うすら寒いものを感じたのか、天城の朱色の瞳が警戒の光を宿す。
 くすくすと微かな笑いが書斎に散らばっていく。嘲るようなその笑い声は、まぎれもなく件のカピバラのもの。カピバラはいたずらしてしまった子供をさとすような、叱るような物言いで言葉を続けた。

「アンタは、及第点じゃ」

 天城は、その光景を目にしたとき——自分の根本にある常識という柱にひびが入っていくのを感じた。

「何だい……その、紅の……君の体にまとわりついている、それは——?」

 天城の視界に映っていたのは決してカビパラではなく、なかなかに凛々しい顔つきをした男性——しかし全裸——侵島零区だった。だが全裸という点をひいても、零区は異様な風体をしていた。
 紅。一言で表すならばその一文字。
 スライムの質感に似た紅の物体が、自分の大きな肢体をまるで蛇のように零区に絡ませている——そんな光景が天城に紅という印象を強く与えていた。目も鼻もましてや心臓なんて微塵も無い、透き通った深紅のそれ。生きている、見ている者にそんな錯覚を与える物体だ。

「……あぁ、そうじゃのう。アンタはまだこの『ブラッディ・ガール』とはお初じゃったの。失敬、失敬。
 初対面だというのに、華々しい会話をこなせ、なんて難儀な話やねぇ?」
「君の質問に答える義理にはボクには無い。それよりさっさとボクの質問に答えてくれないかい?
 君の質問から得られる答えの価値とボクから君への質問から得られる答えのそれは、だいぶ違うんだよ。もしかしたら、僕の勝ちに大きく関わってくるかもしれないしね」
「ふほほ、勝敗は戦う前からすでについている——さて、誰の言葉じゃったかのう。有名な偉人さんではない気もするがのう」

 ふぉふぉふぉ、とこもったような零区の笑いが耳障りな音となって天城に届く。一糸纏わぬ姿を曝け出したままの零区はにたにたと笑っている。あくまでも自分の『コード』の能力についての情報を与えるつもりはないようだ。戦いを行う者として、相手に情報を出来るだけ与えないという常識は一応兼ねているということだろうか。

「君がボクの質問に答えないのなら、じゃあボクはもう一度君に素敵な天国をプレゼントするよ————『Air±2012』」

 ——まぁ、それが君にとって天国かどうかは知らないけどね。僕は死後の世界なんていう妄想に興味はないから。
 補足するように小さく呟くと、天城は片手を掲げた。唇を歪めて、さらに片方の手も同様に掲げる。やがて、天城の整った唇から、小さく『コード』の能力をさらに強力なものにしようと言葉の断片が吐かれていく。

Re: ウィンドウズ・フ ( No.105 )
日時: 2011/04/30 17:43
名前: 豆腐屋 ◆yZ371Yzn82 (ID: EbMOb6mj)

ふう‥‥豆腐を持っていなかったらひでぶしていたところだぜ‥‥なんてことはなかった、豆腐屋でした。
遊さんったらお強いのね、コードを使った様子もなく簡単に女性の敵となれるフレーズを吐いた高峯くんを一蹴して仲間に引き抜いちゃった、キャーカッコイー!
そしてカピパラはやはり全裸、当然のごとく全裸ッ!こんな場面なのにっ!服を着ろ、話はそれからだ。
と思ったら赤いスライムみたいなのを纏ってるんですって!さらにアウト臭が近付くのは気のせいか。
敵方だけど頑張れ天城さん、精神面で折られるんじゃないかって。だってカピパラですもの‥‥
なにが言いたいのかよくわからない感想へとなり果てましたが、それではこの辺りで。

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【参照800突破謝辞】 ( No.106 )
日時: 2011/05/03 17:52
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: http://sasachiki.blog.fc2.com/

>>105
■豆腐屋様
 返信が遅くなってしまい申し訳ありません(´・ω・`)
 豆腐こそ最大の神からの贈り物ということですねわかります、どうもこうもささめです。

 遊VS高峯君は、ついつい展開を早くしようと遊のコードの能力を明かさないままに終わってしまいほんと申し訳ないというか。でも一応軽くはコード出しておくつもりなんで、まだまだですね。道のりは長い……。高峯君は何かもうBKにし過ぎて朱音様ほんとごめんなさいって感じですね。
 全裸こそ人間の本来の姿だからいいのよなんて思っちゃ駄目ですかね。ここで一般の方との考えの差がわかるってわけですね。全裸が普通だと考えているささめはどうしよう。とりあえず赤いスライムを身に着けてるから大丈————確かにギリギリラインを思い切りぶち抜いてるや! さっすが豆腐屋さん! 分かってるぅ! ……失礼しました!

 天城先輩のこと大事にしていんですけど、相手をカピバラにするという非道プレイを行っているので精神面がどうにかなりそうで心配です。Neon様に「よろしい、ならば戦sry」って言われないかも心配です。
 ……あれ、この小説って色々ギリギリ……?


 コメント有難う御座いました(`・ω・´)

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【参照800突破謝辞】 ( No.107 )
日時: 2011/05/04 12:54
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: MlJjY9/z)

どーぞどーぞ、天城君は如何にでもしてやってくださいな((

Re: ウィンドウズ・ファクトライズ!【参照800突破謝辞】 ( No.108 )
日時: 2011/07/04 22:27
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
参照: 誰かが見てくれてることを、願って。

>>107
まじすか。じゃあ女の子にしちゃってもずたぼろにさせちゃっても精神論ばりばり言わせちゃっても……良いかなー!? 
……「いいともー」っていうあの手を期待してるわけじゃないんだからねっ! 微妙なツンデレを失礼しました。有難く使わせていただきます、勿論良い意味で!;

本当に返信遅れてすみませんでしたorz……

コメント有難う御座いました(`・ω・´)



さて、ちょっとずつ更新再開しようかと思ってます。
夏休み中だいぶすけじうるぎちぎちなんですけどね☆←今世紀最大の嘘

■19—現実を直視する青年のラングエッジ。 ( No.109 )
日時: 2011/07/07 22:49
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
参照: 誰かが見てくれてることを、願って。

「……空気の固体化を設定……二酸化炭素窒素酸素全ての濃度固定。仮定プログラム実行、二酸化炭素の濃度に変化有。補正、予定プログラムと同状況————実践を行う」

 両手の内側に、白い球を生み出してゆく天城。周囲の空気をも巻き込み球体は少しずつ大きく変化し——やがて、バレーボール程の大きさになる。零区はほぉ、と感嘆なのか馬鹿にしているのかよく分からない息をつき、攻撃も仕掛けずに眺めていた。
 ——そんな余裕も、今の内だ。
 天城は、全裸の男へと苛立ちを含んだ朱の視線を向け……両腕を掲げ、言葉と攻撃を放つ!

「……Cold Water、ver.4——窒息しろ」

 呟かれた言葉と友に、天城の出現させた球体が爆発的に膨張する。
 球体はさらに加速させつつ、零区の息の根を止めるためにと彼の元へ飛んで行く。
 球体を目の当たりにし、零区が驚いたというような表情を象る。彼にとっての『ブラッディ・ガール』である赤いスライムがざわりと波打つ。正直、見る者を不快にさせる動きだ。

「ッ、気持ち悪い代物、だなッ!」

 赤い生体に怖気づいたのか、天城の攻撃に一瞬の迷いが過ぎる。
 だがその迷いが、余計に気持ち悪さと零区をを潰そうと攻撃に力が入ったようだ。
 球体は、零区の身体を包み込もうと中央から割れるように広がった。どうやら、球体にした“液体の空気”をそのまま頭部にぶつけ、零区の息を止めるようだ。

「こーるどうぉーたー……ばーじょんふぉー、のぉ……」

 零区が天城の言葉を反芻する。
 その間にも、驚きにより固まったままの彼の身体は、銀髪の青年の攻撃によって分厚い空気の壁に包まれる。足元、次に胴体、そして首へ……と、じょじょに赤いスライムと全裸の男が白により見えなくなっていく。
 冷気を放つ白は、一切の情を見せない。ただ死を焦らさせるように、彼の身体を少しずつ凍らせ——零区の表情を曇らせていき————やがて。

「…………っ、はぁ……」

 天城が重い息を吐いた。額には薄っすらと汗をかいている。
 目の前に、先ほどまで自分と言葉を交わしていた男は、白煙を纏い氷と化していた。氷漬けにされた零区は、もう冗談など言える状況ではない。白に覆われた表情は、果たして恐怖で青ざめているのだろうか。

(厄介な相手だった、な)

 厄介とは精神的か肉体的か。きっと前者の方だろう。天城は冷ややかな笑みを浮かべ、動かない氷解を前にして自分の勝利を噛み締めた。くくっ、と喉から微かな笑いが零れる。

「……ほら、見なよ。結局そうして口では大きなことを言ってたって、結局は及第点であるボクに負けてるじゃないか」

 息をつき、天城は酷な評価を零区に与えた。
 黒のコートと銀の長髪を翻し、敗者となった男を後にする。

「さよなら、侵島れい————むぐっ」

 だが、天城は別れの言葉を紡ぐことが出来なかった。
 なぜなら……

「ッ、これは……」

 一本の赤いリボンが、口元に絡みついたからだ。天城は次に来るであろう攻撃を察し、リボンが伸びた先へと振り返った。リボンは血のように赤く、そして長く。
 ……まるで、さっきの『ブラッディ・ガール』が天城との別れかを惜しむかのように。
 リボンは、氷漬けになった零区の足元から伸びていた。

「こンの……カピバラがァッ!」

 リボンを振り切ると同時に、大きく左足を零区へと踏み込む!
 小さく唇を動かし『コード』の数式を脳内で構築する。すると天城の両手には凍りで出来たクナイが現れる。
 天城はクナイの刃先を零区に向け、姿勢を低くし、冷たき刃を放った!

「死ね——この偽善者ッ!!」

 悪意と友に放たれた氷の区内。クナイは勢いも切っ先も、人間を殺すのに十分過ぎる殺傷力を持っている。クナイは天城の手により、物凄いスピードで零区へと。
 しかし零区は動かない、いや、男の死体は動けない!
 やがて獲物へと到達したクナイは、一瞬で氷付けの死体を粉々に——

「冷たいのぅ、天城西院」

 ——静かな書斎の中で、零区の淡々とした言葉が、天城の耳に届いた。

「お主の及第点は、取り消せそうにないのぉ」
「なッ……!?」

 驚愕した天城は、閉口した。
 天城の中性的な顔立ちが、恐怖で歪むのに誰が気付いただろうか。自分の喉の奥から掠れた息が出てくるのに気付き、同様に焦りにも気付く。
 普段の天城なら敵の言葉になんて構わず、攻撃の手を休めないのだが。

(目の前が、赤色に……ッ)

 ————視界が、赤に塗りつぶされる。
 我に返った天城は、自分が攻撃したのではなく、“されていた”ことをようやく理解した。
 その奇妙な世界を目の当たりにし、荒い息をつく。背中に何か冷たいものが流れ、肌があわ立つのを感じる。天城が恐怖をふつふつと知っていく最中にも、彼の視界は紅一色で彩られていく。

(やっぱり……)
「気味、悪い……ッ……!」

 天城の搾り出すような声は、眼前の紅に包まれた。

申し訳ありません。 ( No.110 )
日時: 2011/07/07 23:08
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
参照: 誰かが見てくれてることを、願って。



ごめんなさい凄く謝罪したいことが……orz

氷砕君についてなのですが、氷を砕くという名前な為か完全に氷武器にして戦う子だと勘違いしてました……orz
パーセンター様本当にごめんなさい……鉄槌ってちゃんと書いてあるのにね! 何でささめ雰囲気で氷にしちゃったんだろうかね! 真実はいつも一つ、馬鹿だかr——失礼しました本当に……! 今から直していきます><;

応募してくださった皆様方も、「ここ間違ってらぁ!」ってところがあったら気軽に話してくだされば有難いです……ほんとささめ一度土下座というか床にもぐりこんできた方が良い気が……申し訳ないです……

それでは。
……本当に申し訳ありませんでした(;ω;`)……!

■どうやら参照1000突破 — 7月10日日曜日にて ( No.111 )
日時: 2011/07/10 22:32
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
参照: 誰かが見てくれてることを、願って。

■どうやら参照1000突破 — 7月10日日曜日にて

 「1000……だと……この小説がァ……この小説がァ——ッ!」っと某吸血鬼のような最期になりそうなところで踏みとどまりました。三途の川が少し見えたけど、この参照1000突破は嘘じゃないらしいそうらしい。
 ということでどうもささめです。1000突破とか……うーん、5年ぶり?4年ぶり?ぐらいですかね。とにかく嬉しいですね。ですねですねヒャッホゥゥゥゥゥ!! 貴様らの身体を参照1000突破という文字で彩ってやろうk——あ、はい。ちゃんと言葉述べさせて頂くので、管理人れんらく掲示板には行っちゃらめぇぇえええええ!」ということで、ここまでが余興でしたよっと! 実はまだ本題には入っていなかったというフェイクですよ!
 それでは先に謝辞を。
 途中で挫折したり、小説から離れてみたり。そんなマイペーススローペースで続いてきたこの小説を、愛想をつかさずに読んでくださる方、毎回有難う御座います。そして「今クリックしたけどさぁ……何この人? 雑談とテンション変わらなくね?」という初見の方も、閲覧有難う御座います。とりあえずささめの人柄ではなく小説を読んでくだされば嬉しいです。
 ……ふぅ。
 と、ここまで一息に言ってみた訳ですが——ちょっとここで『ウィンドウズ・ファクトライズ』の誕生秘話でも。長い? そこんとこ俺もようわからん。
 
 まずはこの小説の進行について。
 これはまずですね、たいてい直接メモ帳に書き込んでいます(キリッ
 そして誤字とか脱字とか気にせずに書き込んだ瞬間投稿しています(キリッ
 ……え、計画? やだなぁ、明日は国語があるんですってよ奥さん。

 次にキャラについて。
 主人公(笑)の日吉君の元ネタは、皆様お察しの通りあの某科学と魔術が交錯するラッキースケベもとい主人公の男の子ですね。あえて名前は出しません。……いや、だって分かる程鮮明に書いて——続きは危険なので黙っときます。
 ちなみに杏子ちゃんは、デュラの茜ちゃんを。解明さんは波江さんを。りー子はその場でぱっ、と決めました。遊はハルヒの長門ちゃん、カビパラはげっ歯類最大の生き物を参考にしました。外見のイメージもそんな感じです。
 ……あぁ、緑崎は木ィィィィィ原くゥゥゥゥゥゥんっぽい悪役です、はい。

 最期にオリキャラについて。
 皆さん素敵なキャラばっか投稿し過ぎなんですよ畜生。
 おかげさまで小説更新しやすい(速度は別)んですよ畜生。
 そして……日吉の扱いが……ッ……サブキャラ同然になってるんですよ……ッ!←一目瞭然
 まぁ良いんですけどね。男より幼女、濡れる美女です。頭弱い目つき悪い不良とか現実主義な男の娘(?)とか鉄槌キャーカッコイイーな子とか、そういう個性溢れる方が好きですよささめは。亨君ゼッタイ出すからね……くっ!

 さて、本当にラストです。
 突然なのですが、せっかく参照1000突破したんで何か企画物やろうかな〜と考えています。
 キャラ絵を募集したり、短編(アンソロ?)募集したり、自分でリクエストのある短編を書いてみたりとか。一番最後のが一番有力なんですけどね。そこまで知名度ある小説じゃないので(苦笑)

 それではそれでは。
 本当に、毎度閲覧有難う御座います!
 ラストまでそろそろです、ぐだぐだ更新にこれからもお付き合いください!