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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- ■17—舞台B、その半分にて ( No.86 )
- 日時: 2011/03/29 13:07
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
- 参照: アクセロリータ「やべェよ! 止まんねェよ!」
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「あーあー。逃げられちゃったなぁ」
残念そうに、愉快そうに足元の水を見て呟く姿は年相応の少女に見える。來榧はスカートを濡らさないように、ローファーを履いた足元で器用に路地裏を出て行く。通りに出ると、濡れた何かを引き摺った後が遠い道の先まで点々とシミになっている。さっきまで追い詰めていたりー子という少女のものだ。ついつい、口元が吊りあがる。
(……でも、少し妙なんだよねー……何でだろ?)
だが、その笑いもすぐに疑問が含まれた。むぅと唇を尖らせて、手の平に残ったさっきの水の感触を思い出しつつ、手のひらを拳にしたり開いたりする。
(さっき、あのりー子って人が逃げ出す直前に、私は思い切りお腹を狙って水のドリルを放出させたはずなのに。でもあの人は普通に逃げられた。決して避けられたり対抗できたりだとか、そういう攻撃じゃなかったのに。なのに、何で?)
みゅーっと眉を八の字にしていた來榧だったが、やがて自分のコードの能力を確かめるように水の塊をくねらせてみると、りー子が逃げていったであろう方向へと歩みだした。三つ編みにされた金髪が、來榧の動きと共に上下する。
(何にしろ、私の攻撃は水分を自由に操ること。よほどのことが無い限り、私に欠点はない。……だから、安心して、)
いたぶれば良い、と來榧は小さくほくそ笑んだ。年齢に似合わぬ、大人びた表情のままに。
やがて彼女は、その先に獲物を見据えて歩みを進める。
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