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■18—舞台B、ゲーマーと不良 ( No.97 )
日時: 2011/04/16 14:08
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
参照: 意外ッ!! それはアク禁ッ!

「……………………そう、取引。別に自分はお前みたいな奴を潰そうと思えば潰せるから、取引じゃなく脅迫みてーな形になるけどね」
「はッ、俺がそんな言葉に乗るとでも————」
「……………………いや、乗る」
「あァん? 俺が乗る? 何でだオイ」

 周囲の空気が一層冷たさを孕み、座り込んでいる2人の間の雰囲気に真剣みを帯びさせた。
 高峯の疑問に答えるために、乗ると断言した遊は更に言葉を続ける。

「……………………まず疑問。お前は何故こんな、『マザー』から離れた場所で自分とりー子を足止めしてる?」
「いや、知らねェっつーの。緑崎が勝手に割り当てたんだろーが」
「……………………違う、その割り当てに深い意味があるってことに気付け三流」
「何だとゴルァ!」
「……………………うるさい、とにかく自分の話を静かに聴いてろ」

 本当に分からない。何故こいつは突然、俺を始末せずに取引なんて持ち出すのだろうか——————高峯は分からないという言葉を飲み込み、遊に話の続きを促した。遊の表情は殆ど無、あえて言うならば不快に近い。

「……………………お前がもしもその力を認められ、主要メンバーなら。お前は必ず『マザー』を襲う一人として今『マザー』内でその力を揮っているはずだろう?」
「っ!! だ、だけどな、俺には緑崎さんからの信頼が————」
「……………………そこが甘い」
 
 それはセーブポイントを確認せずにホラーゲームに挑むぐらい甘い、と遊はよく分かるようで分からないたとえで高峯の反論を一刀両断した。ぐっと高峯がまた気まずい顔で息を呑むが、遊はそんなこと気にしてはいない。ざくざくと自分の理論を築き上げていく。

「……………………もしも信頼があるなら、お前は緑崎(という何故か知ろうともしていなかったリーダーの名前)の右腕として、『マザー』の内部で緑崎と共に戦っているんじゃねーのか」
「た、確かにそれは……」
「……………………だけど違うだろう? お前は今『マザー』から結構離れた場所、学園都市直属学園、聖シミュレーション学園の芝生で尻餅をついている」

 そこまで言うと、高峯は算数の問題の答えがわかった子供のような、真実の光で輝く眼を遊へと向けた。

「ハッ、確かにそうだ! くそっ、俺ははめられてたのかッ!?」
「……………………つまり、お前は信用も信頼も力もないという三拍子で評価された挙句、今このくだらない抗争に巻き込まれているということ」

 遊の言葉により、ようやく高峯は周囲の景色を見渡して自分の座り込んでいる場所を把握しする。
 そう、現在2人が会話を行っているこの場所は最残日吉が通っている学園都市直属学園、聖シミュレーション学園の敷地内にある芝生だった。青々とした草が地面についた高峯に押され、体を屈ませている。涼しいというよりも肌寒いような風は、どこからか騒がしい喧騒の一片を連れてきているようだ。微かに遠くの方から何かが割れるような、砕けるような音がする。

「……………………で、お前はどうする?」
「どうする、ッつって?」
「……………………このままその緑崎という奴に良い様に使われて、処分されるか。それともカピバ——では無く、私の師匠と同じ志である『マザー』の死守をこっそり手伝うか」
「あァ、それならもう答えは決まってるッつーの」

 すくりと高峯が腰を上げた。目つきの悪い瞳が、自身の決意を物語っている。同じ志を持つ者だというのに手も貸さずに、遊は依然低いテンションのまま問う。

「……………………まず、お前の名前は」
「高峯——高峯翔だ」
「……………………自分の名前は、遊」
「あそび、ねェ? チッ、面倒だけどこの抗争が終わるまではテメェを手伝ってやるよ。……面倒だけどな」

 面倒を強調しながら、高峯は視線を空へとそらした。