ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 日常的非凡。 ( No.8 )
- 日時: 2011/01/16 21:07
- 名前: 螢 ◆KsWCjhC.fU (ID: EFzw/I/i)
02.日常的非日常。
「梓ー今日さ、俺の通ってる大学の友達が来るんだけど……」
棗が朝食を食べながら俺に話しかける。
「ん、わかった」
俺は棗の言葉を快く受け入れると、卵焼きを口に放り込む。
「そうか、二人来るから。男と女」
棗は嬉しそうに笑うが、俺は棗の言葉に疑問を覚える。
「え?女?」
「そう、女。良いヤツだよ。本当」
棗は嬉しそうに笑うと、食べ終わった皿を持って台所に行った。
———棗に女友達なんていたんだ。
俺はぶっちゃけ驚いていた。
棗は容姿が良いのに異性に疎い。
所謂、「硬派」というヤツだ。
だから、異性の友達等いないと思っていたんだけど。
「以外とタラシ、だったりしてな」
俺は箸を口にくわえたまま呟いた。
「こんにちは。お邪魔します」
棗が言った通りに、人が来た。
「あ、来たか。上がれよ」
棗は嬉しそうな笑みを浮かべて、二人を家に上げた。
「梓、この二人が俺の友達」
梓は笑いながら二人を俺の前に連れてくる。
「僕は橘川 柚子です。どうぞ宜しく」
女の方が、俺に丁寧に頭を下げて挨拶してくる。
俺が軽く会釈しようとした時に
「君が……梓君……」
橘川さんがそう小さく呟いたのが聞こえた。
感情がこもった、恐ろしい声だった気がした。
「俺は各務 一。お前の兄貴と同級だ」
もう一人の男の方が俺に向かって自己紹介してくる。
俺は軽く頭を下げると家を出た。
「どうしたんだ?」
棗が心配そうに聞いてくるが、俺は笑って「散歩」とこたえた。
「暇だ」
三人の時間に俺がいたら邪魔だろうと思って家を出たのはいいけれど……
「暇だ」
俺は再度その言葉を繰り返した。
空はもう暗くなってきている。
「藍原君?」
俺が空を仰いでいると、前方から声が聞こえてきた。
俺は首を元に戻して、その声の主に向かって声を発する。
「星野?」
星野 雪乃。
静かで大人っぽい雰囲気の同級生。
身近な事から大事件の事まで、あらゆる事を把握していることから、ついたあだ名は「情報屋」。
本人はそのあだ名が嫌いではないらしく、皆にそう呼ばせている。
「今外に出ない方がいいよ」
星野は俺とのすれ違いざまに言った。
「え?」
「バラバラ殺人があったんだって。物騒だから家に帰った方がいいよ。お兄さんのお友達もいるんでしょ?」
星野は俺の方を振り返る事もせずに言うと、そのまま歩き出してしまった。
———何で知ってんだ。
俺は内心ツッコミながらも家に帰る為の帰路をたどった。