ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 日常的非凡。 --参照100突破。皆様有難う御座います-- ( No.50 )
- 日時: 2011/01/22 17:55
- 名前: 螢 ◆KsWCjhC.fU (ID: EFzw/I/i)
ああ、全部、思い、出した。
「お前、轟木なのか……?」
俺は氷室の顔を見つめる。
氷室の顔にはさっきまでの狂気に満ちた笑顔は消え、代わりにあるのは寂しそうな表情だった。
死のうとしたときの【轟木】の様に、氷室は笑う。
苛められていた、存在を否定され続けた、あの時の様に。
俺が憧れていた、轟木の様に。
「そう。自殺しようとして、失敗した死にぞこないだよ」
氷室は自分を嘲る様に笑う。
俺はその表情に胸が痛んだ。
「気付かなかったのは仕方ないよね。私そのあとすぐに転校して名前も変わったし」
氷室は嘲り笑う表情を崩さずに顔を伏せる。
「その時からね、愛しているんだ梓クンを♪」
再び顔を上げた氷室には、また狂気が満ちていた。
———ああ、闘っているのか
自分と。
「俺を、殺したいか?」
俺は立ち上がり、氷室に向き合う。
「俺を、殺したい?」
俺は再度問う。
氷室から狂気は消えない。
「殺したいよ?」
氷室は当たり前だと言わんばかりに首を傾げる。
———もう、『氷室』は消えたか?
彼女を支配しているのは狂気だけか?
「殺したい?」
俺は縋る様に呟く。
————これが、最後。
もし、殺したいと言われたら、俺は『氷室』に殺されよう。
もし、逝きたいと言われたら、俺は『氷室』を殺そう。
もし、もし。
生きたいと、言われたら——————
「一緒に、生きたい」
——————抱き締めてやろう。
氷室の手からナイフが落ちる。
氷室の瞳から涙が落ちる。
俺は氷室に走り寄り、思い切り抱き締めた。
「ごめん」
慰めるでも、怒るでもなく。
俺は謝る。
————気づいてやれなくて、ごめん。
————助けてやれなくて、ごめん。
「ごめんね……ッ」
氷室も、俺に応える様に呟き、俺の背に腕を回す。
俺達の周りには、血ばかりが飛び散っているけれど。
ハッピーエンドで、いいのかな?
一応end.